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ヴァランシエンヌ的マイスタージンガーの楽しみ その2

役柄について、思うことをいくつか…

《ザックス》
これこそ、ドイツ系をレパートリーにする低音歌手にとっては「憧れの役」の一つでしょうね。声は勿論ですけど、歌の表現、演技力、そして体力的にも、相当大変な役だと思いますが、それだけにやりがいもあるんでしょうね(^^)

ザックスの解釈には色んな側面があると思います。これだけ複雑な人間性を持った役柄は、オペラの登場人物としては、かなり珍しいタイプだと思います。
何よりも必要なのは《知性と、ほんのちょっとの革新の気持ち》かしら?と思います。

それにしても、人格円満、仕事は出来る、人望もある…でも貧乏(−−;なところを見ると、こんな「絵に描いたような人」って、実際にいるのかしら?と思っちゃいますよネ(^^ゞ
2幕でのエーファとの絡みは、まだまだ「枯れていない」男性的な魅力も欲しいところ。
それは決して、見た目だけの問題ではなく、歌い方にも拠る所が大きいでしょう。

この役は、只今新国立劇場で上演中のプロダクションを演出した、ベルント・ヴァイクル(Br)が当たり役にしたこともあって、最近ではバリトンのザックスが定着した感が強いのですが、私はどっちかというと、もう少し重心の低い、つまりバスかバス・バリトンのザックスの方が好みです。

バリトンにはベックメッサーという、敵役が対峙していることですし、この方が声の対比がつきやすいのでは…と思います。
また、役作りにおいてもバスの方が、腕っ節の強い親方でありながら、知性を感じさせる…という雰囲気がより強く出せる気がします。
この辺は、好みにも拠るかと思います。

勿論、ぼそぼそ歌っているだけとか、力で押し切るだけでは、つまんない…と思います。
知性に裏付けられたユーモアも欲しいですし、ザックスに求められるものは、言い出したらキリがないくらい、いくらあっても足りないのかもしれません(^^;

私の理想はもっちろん、テオ・アダムで決まり!と言いたいところですが、これだけ注文をつけておきながら(^^;実はそれなりにどんなザックスでもあまり不満なく聴いてしまうんですよね。
超一流のひとしか手掛けない役柄…ということと、多用な解釈が可能ということの裏返しかもしれません。

《ヴァルター・フォン・シュトルツィング》
向こうっ気が強くて、かっこ良くって、そして「センス溢れる天才」であること。
ヴァルターは、ワーグナーのテノール役としては比較的軽い役として挙げられますが、長丁場を歌った挙句に?最後に華やかな優勝歌が控えていますから、やっぱり大変な役柄だと思います。

ルネ・コロの、柔らかくて叙情的な歌も勿論素敵ですけど('88のバイエルン来日公演でご覧になられた方も多いのでしょうね^^)残念ながら88年のバイロイトでの放送以外は正規録音が残っていない、ペーター・ホフマンのヴァルターは、とても端正で、且つストイックなヴァルターです。

ドイツの正統的ヘルデンテノールの流れを汲み、重量感を感じさせつつ、凛々しさもいっぱい!なヴァルターは、やっぱり聴いていて気持ちがいいです(#^.^#)
こういう、かっこよくって、清潔感のあるヴァルターを、一度でいいから実演で聴いてみたいものですねぇ・・(^_^;)

ホフマン自身も、とてもお気に入りの役だったとのことです。
役についての彼の考え方及び解釈は、edcさん宅の役についての歌手のコメント集[5] 役についての歌手のコメント集[5] 続き  で読むことができます。
また、コラボレーションのページで扱っているWE NEED A HERO!No.10の記事も参考になるかと思います。

そうよ〜〜こういうことこそ必要!そして求めたいもの^^!って、素直に思います…

《ベックメッサー》
最近ではベックメッサーに焦点を当てた演出が多い気がします(^^
「道化一筋」や「イジワル」に走っては面白くありません。
ワーグナー自身も「全て音符に書いてあるから、殊更喜劇さを強調する必要はない」とか言ったというような話を、どこか読んだ記憶がありますが…

ある意味、この役こそ、この作品の中では最も難しいのかもしれませんね!地位も名誉もある人物なんですから、エレガントにやって頂きたいですね(^^;
ハンブルクで見たアンドレアス・シュミットは、私の理想をほぼ満たした、素敵な^^ベックメッサーでした(勿論誉め言葉ですよん)

《ポーグナー》
大事な一人娘を賞品に出す神経は実はよくわからないのですが、何しろ街一番の大金持ち。当然、リッチマンなんですから、声にも表現にも、ノーブルさが欲しいですね(#^.^#)
だって、つけられている旋律は、ワーグナーには珍しいくらいレガートで柔らかいんですもの…
実は理想的なポーグナーに当たることのほうが、少ない…かな。
録音では、カラヤン盤のリーダーブッシュが最高デショ^^と思ってます。

《関連記事》
2002年5月 ドレスデン実演鑑賞記(W.ワーグナー演出)
2004年12月 ハンブルク実演鑑賞記 その1(P.コンヴィチュニー演出)
2004年12月 ハンブルク実演鑑賞記 その2(P.コンヴィチュニー演出)
P.コンヴィチュニー演出についての考察

映像リスト
CDリスト
’88バイロイトの【ニュルンベルクのマイスタージンガー】

興味のある方は《edcさん宅の関連記事》も合わせてご覧下さいね。こちらのリンクから、「役についてのコメント集[5]」へも飛べます。

《9月30日 追記》
keyakiさんが新国立劇場での、楽しい鑑賞記をUPして下さいました。マイスタージンガーお初だったとのことですが、とっても楽しめたとのことです(^^!

《10月1日 追記》
edcさんも新国立劇場での、楽しい鑑賞記をUPして下さいました。演出についても、細かく分析なさっています。keyakiさんの鑑賞記と合わせて読むと、本当に舞台が目に浮かぶようです。

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オペラ」カテゴリの記事

コメント

TB、たくさんさせていただきましたm(_ _)m
新国立劇場には行くつもりですので、後でまたコメントしますね。

わー、edcさん早起き(^^!
TBありがとうございます。

>新国立劇場には行くつもり

感想、お待ちしています(^_-)-☆

新国立劇場マイスタージンガー、とってもおもしろかったです! 大満足でした。詳細はのちほど・・・~~~~( ^o^ )/

見てきました!
あっというまの6時間、とても楽しめました。
初マイスタージンガーには最高の演出でした。
ヴァランシエンヌさんの役柄の性格付けのように、
それぞれのキャラクターが明確に描かれていましたし、
主要キャストの見た目のずれもなくよかったです。

◇エーファ役のアニヤ・ハルテロス、スーパーモデルのように背が高くて、品のいいお嬢さんって感じで、小さい時から可愛がっていて、魅力的な女性に成長して、、、ザックスの気持ちが素直に伝わってきました。

◇ペーター・ウェーバーのハンス・ザックスは、これまたスレンダーで背が高く(多分195はあるとおもう)、靴屋とはいえ、さすがマイスター、知性溢れる風貌で、
>「絵に描いたような人」って、実際にいるのかしら?
なんですが、とても説得力がありましたよ。

◇ベックメッサー役のマーティン・ガントナー、これまた、やることなすこと更に見た目もいかにもお役人、あの、妙な歌が耳について、休憩時間には、鼻歌が出てしまいました。
最後の大団円で、どこに雲隠れしたのかと思ったら、最後に、チョークで"Nein"と書いた歌の審査の時のチェック用のボードを掲げて出て来てアピール、懲りない奴を演じてました。(もしかしたら、これってお決まりの演出なのかしら?)

◇騎士殿のリチャード・ブルナー
>向こうっ気が強くて、かっこ良くって
遠目に見れば、及第点です。(オペラグラスなしで、充分表情までわかる席でしたけど)

◇日本人キャスト
ダーヴィットの吉田浩之、レーネの小山由美とてもよかったですよ。
大勢いるマイスター達が、見た目、はっきりわかるような、マンガチックなヘアスタイルでしたが、これは、なかなかいいアイデアだとおもいました。ヴァイクルにしてみれば、日本人はみんな同じ顔に見えるので、そういうアイデアが浮かんだのかなぁ、、なんて思いました。

ということで、総合的にとても楽しめましたし、しらけることなく感動もしました。

昨日は、集客では、バイエルンに負けていたようですが、新国のみなさんは、熱い拍手で、満足している方が多かったように感じました。

私の場合は、見てなくて言うのもなんですが、バイエルンの方だったら、多分??だったと思います。
判じ物の謎解きが必要な演出は疲れますし、ましてあのナチス絡み?のフィナーレでは、演奏がよくでも拍手する気になれない、、、なんていうのは???

まあ、バイエルン組の方々の一部には、新国の演出はノー天気?と揶揄する人がいますが、両方見て、新国の演出の方が素直に楽しめたという方もたくさんいますし、それぞれでいいんじゃないってことでしょうけど、、、
バイエルンの方は、あの文字の意味は、数字の意味は、、、とか、政治的意図云々、乱闘に参加していたオケ団員が黒人に叩きのめされてたとか、、、
というような話で盛り上がっておりますね。

ごめんなさい、長過ぎますね、でもせっかく書いたのでこのまま投稿させて頂きますね。
ワーグナーに詳しいedcさんのレポート楽しみにしてます。

keyakiさんの感想、全面的に同感です。確かに、ワーグナーはちょっと・・・という人たちも、とことん楽しめたみたいでした。私、大声で笑いたいけど、音楽のじゃまはできないって、必死でこらえてました。そういう人、多かったんじゃないかしら? 

まあ、ねちゃった人もいたようですが、そりゃどんなお芝居でもそういう人はいますからね。合唱とオケの大音響ではさすがに目が覚めたかもしれませんけど、それでもねてたとしたら、すばらしい子守唄だったことでしょう^^!

人類普遍の理想追求って感じで、素直に喜べる舞台でした。今シーズン、最初から大当たり、うれしいです。

私のほう、記事アップしたら、TBします。

keyakiさん&edcさん:

お二人とも大変楽しまれた様子、ヒシヒシと伝わってきました。
特に、普段ワーグナーはあまりお聴きにならないkeyakiさんが素直に楽しめた…というお話を伺って、本当に嬉しいです。

お二人が観てこられた木曜日は、日にちがバイエルンとバッティングしていたんですね。
(何と言う贅沢な話でしょう…ここ数日、日本がとーっても楽しそうに感じるのは気のせいでしょうか?^^;ちょっと、いやかなり羨ましいかも(笑))

keyakiさんのおうちのコメント欄にも書きましたけど、とりわけこの作品の場合は今の時代、ドイツ国内向けと、それ以外の国向けで、演出コンセプトが変わってきて当然…かもしれません。

政治的な意味を入れること自体は、私は悪くないと思いますが、それはあくまでも、ドイツ国内で上演されることを前提に作ってあるものですし、他国でやっても、その部分だけが一人歩きする可能性もありますしね…

ヴァイクルは長年この作品に取り組んできたことですし、もしかしたら自分にとって、理想的な《マイスタージンガー》の演出は、もはやドイツ語圏以外の国でしか出来ない…と思っていたのかもしれませんね。

edcさん:
>私のほう、記事アップしたら、TBします。
バイエルンのタンホイザーの鑑賞記と続けてUPなさるのは、なかなか大変だと思いますが、お待ちしております(^^!

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