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《ゆじーの・にぇーぎん》アメリカ某地方劇場での、「エフゲニー・オネーギン」

一応舞踏会なんですが… 行って来ました(^o^)丿

1シーズン3、4演目を、2度上演するという形式を取っている、アメリカの地方都市によくあるオペラカンパニーですから、レベル的にはそれはそれは、もう最初から目をつぶらなくては…という思いでした。

歌手もこういった、アメリカの地方で主に活躍中の人たちのようです。
私としては、とりあえずこの好きな作品が、原語上演されるから、出かけてみようという気になったのです。

まさに「ゆじーの・にぇーぎん」つまり、「ロシアのエフゲニー」ではなく、「アメリカのユージーン」という感じ。
退廃的19世紀ロシアの哀愁とは程遠い、思い切りアメリカの西部劇!でした。

舞台はオーソドックスな、そう、シカゴリリックの映像で見られる演出をもっとチープにしたような、いわゆる《古式ゆかしき演出》です。

エフゲニーって、ニヒルで自虐的、ひと嫌いで、いつも斜に構えているけど、自分の情熱の持って行き場がないというか、シンから嫌なやつではないと思ってます。
もし、単に嫌な男としか見えないとしたら、それは役柄解釈に問題があると思うし、少なくとも今までに見た映像の中では、そういう風に感じたことはありませんでした。

でもこの「ユージーン」は単に嫌な中年のいやらしいオヤジ。
肩を揺らしながらえっちらおっちら歩き、腹が出た典型的アメリカ人。タチヤーナが「一目見て、その陰鬱でニヒルな感じに惹かれた」とはとても言い難い、ロシアの貴族階級の男とは対極にある男でした。
歌のほうはどうかしら?…と思うけど、最後にはバテバテ。3幕最後の、タチヤーナとのやり取りでは、早いパッセージは全く歌えていませんでした。

1幕でタチヤーナを拒絶する時も、手を握ったりとか、2幕でオリガにちょっかい出す時だって、ベタベタ触りまくってキスするわ、馴れ馴れしいったらありゃしない。決して体型のせいにはしたくないのですが、ダンスも上手く踊れず、ひたすら女の子の肩に手をかけて、ベタベタするだけ…
ひと嫌いのはずのエフゲニーが、そういう仕草はしないでしょ、と思いますが…

こ、これは…完全に「オネーギン」という役柄を勘違いしてる…と思いました…

タチヤーナは、声は悪くなかったけど、こちらも立ち居振る舞いは、ロシアの上流階級のお嬢さんとは程遠い、アメリカの田舎娘ですね。やっぱり、歩き方が悪い。それは違うでしょー!と思う場面がいくつもありました。
それでも、音楽の力も相まって、あの長大な「手紙の場」は、それなりに感動的でした。

オリガも然り。いちいち喜びの仕草が大げさで、いかにもアメリカ的な感じがしました。多分、アメリカ人には、あれくらい大げさにやらないと、わからないのかもしれません…

レンスキーとトリケ(2幕にちょろっと出てくる、フランス人)は、とっても良かったと思います。
トリケさんは、大げさではないのに飄々とした感じが面白かったです。

私は遠くの席でもオペラグラスを使わないので、今回の歌手陣の顔立ちは、はっきりとは判別できませんでしたが、レンスキーは、遠目に見る分には充分ハンサムでしたし、声は上のほうが苦しかったけど、中低音の響きがきれいで、歌い回しも繊細だったし、最初のひと声で、おっ?!と思いました。

それに、胸を反ってスクっと立つ、立ち姿が決まってました。
レンスキーのアリアも、すてばちな感じと、挫折感、生きることに対する未練が伝わってきましたし、決闘の場面でも凛とした感じに引き込まれました。

タチヤーナのお屋敷でのオネーギンとの諍い…だんだん激して、相手の挑発に乗ってオリガを罵倒し、オネーギンに決闘を申し込む…この一連の流れが、すごくわかりやすくって、この場面、本当に胸がいっぱいになって、涙がじわーっと出てきました。

音楽の力かな?と思いましたが、冷静になって考えてみると、やっぱりレンスキーがきちっと決め所を外さず、適切な演技歌唱をしていたことに尽きると思います。
ボケーダラーと突っ立っている、オネーギンとはここではっきりと差がついていましたね。

もう一つ、がっかりしたのが:
3幕冒頭で、オネーギンが「ああ〜〜退屈だぁ」と独白する場面。独白のはずなのに、派手な服を着た黒人の召使の肩を抱きながら、あれやこれやと語っているんです。
どうしてこのひと、召使に愚痴っているのかしら?と思ったら…

実は、この召使だと思った黒人さん、なんとグレーミン公爵だったんです…

黒人歌手がいけない!ということは言いたくないんですけど、姿勢を含めた仕草とか、歩き方を工夫しないと…
それに、ロカビリー歌手が着るような、黒地に金ぴかのラインをふんだんに使う、ド派手な衣装で、どうがんばって見ても「地位も名誉もある、退役軍人の威厳のあるおちついたおじ様」には、見えなくて…
妻のタチヤーナに対しても、威厳どころか顔色をいちいち伺うような仕草には、ゲンナリしました…

オネーギンが歌っている最中、左端に、軍服姿の、すくっと立ったすらっと系の渋いオジサマが立ってたので、このひとがグレーミンに違いない!と思ってたのですが、そんなに甘くはありませんね。
歌はどうかしら?と期待したんですが、殆ど「黒人霊歌」の世界…

あぜんぼーぜんであっけに取られ、ダレカさんに脳内変換する暇もなかったなぁf(^^;

レベル的には、古い日本の映像で、一生懸命、西洋音楽に取り組んでいるけど、文化的土壌の違いの溝は深いぞーーという感じを受けたものがありますが、ちょうどああいう感じ。頑張っているんだけど、何をやっても西部劇になってしまうというのか…
本当にアメリカとロシアは違うっていうのが、よくわかります。

それでも、レンスキーが絡む場面では、充分引き付けられましたし、それこそ「つぼを外しまくった、ユルーイ演奏」でも、やっぱり好きな作品だから、生で見ればそれなりに感動的で、マチネだったにも関わらず、眠くならずにちゃんと見れました。

ここまでズレズレの「オネーギン」なんて、ある意味こういうアメリカの田舎でしか見られないと思うと、文化の違いを考える上でも興味深いと思いました。

主人は相当タイクツしたみたいで、特にオネーギンに対して、元文学青年として、ある種の同族意識を抱いているひとですから(笑)こういうオネーギンはユルシガタイ<|( ̄0 ̄)o>と言ってましたけど、終わったあとにはあれやこれやと話の種が出来ましたし、私としては、まずまず楽しめたかな?という感じです。

2週間後のクリーブランドの「オネーギン」は、演奏のレベルはもう少し高いと思いますけど、やっぱりこてこての「ゆじーの・にぇーぎん」かもしれないなーと思うと、楽しみなような、怖いような(^_^;)

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コメント

これはもうめったに読めない貴重なレポートですね。メトロポリタンやシカゴ・リリック、サンフランシスコなんかのレビューは雑誌でも読めますが。ある意味アメリカの地方都市のオペラ受容の実態(?)を晒す(??)衝撃の(???)ルポということで。

いっそ本当に西部劇にしちゃえば、よかったのでは。カウボーイハットに駅馬車。白樺の代わりにサボテンとか出して。南北戦争時代とかも良かったかも。タチアーナはスカーレット・オハラの衣裳で。

>ダレカさんに脳内変換する暇もなかったなぁf(^^;

そりゃ、無理ですよね。(笑

ところでレンスキー役の人は、なんという名前ですか?もし記憶しておく価値がありそうならば。

>思い切りアメリカの西部劇!
TAROさんも仰ってますが、ここまでアメリカンな公演もなかなか無いのでは!?それにしても、おやじなオネーギンは嫌だ~!田舎娘のタチヤーナも嫌だ~!ダサい衣装のグレーミン公爵も嫌だ~!とにかく色々と嫌だ~!(笑)原語上演というだけで他の部分に意識が回らなかったんでしょうか?役柄と歌手のしぐさがあわないというのは、演出家の能力不足でしょうね。歌手はそれぞれ癖があって当たり前、それを一つの作品としてまとめてくれなきゃ、演出家がいる意味が無いでしょう。でも、せめてレンスキーが満足のいく歌手でよかったですね~。

>2週間後のクリーブランドの「オネーギン」
比較レポートお待ちしています!

TAROさん&サルダナパルスさん:

あはは(^^; お二人の仰る通り

>いっそ本当に西部劇にしちゃえば

と、私も思いました…というよりも、このレベルの演奏でもそんなに腹を立てずに(期待度によって、評価は微妙に変わりますね…確かに^^;)冷静に鑑賞できたのは、実は西部劇に脳内変換していたのかもしれません(^^;

>役柄と歌手のしぐさがあわないというのは、演出家の能力不足でしょうね。

いえね、とにかくそんなレベルにまで達しているとは言い難いので、演技指導とかしているのかどうかも???です。
こういう裾野のレベルでのお仕事なさっていらっしゃる方もいるんだ!という意味において、まさにTAROさんが仰る

>ある意味アメリカの地方都市のオペラ受容の実態(?)を晒す(??)衝撃の(???)ルポということで。

というご意見は、正論でしょうね(^^;

それと、この作品はロシアオペラの中でも、格別に地方色が強いですから、アメリカからは最も遠い精神性とでもいうのか、理解するのは至難の技だと思いますよ。最も《苦手分野》じゃないのかしら?

観客の大半は、このオペラを全く知らずに来ていて、字幕を読んでゲラゲラ笑っていましたからね…
(これもですね~~前に別の場所で「サロメ」見た時も同じような感じでしたが、今回は比較的皆さん、おとなしかったですね…)

「サロメ」鑑賞記はこちら↓結構笑えると思います…
http://www.geocities.jp/traeumereienvalencienne/jituen-01.htm

演奏のレベルは、この時のほうがよかったと思います(^_^;)
ちなみにレンスキー役のテノールさんですが、Jason Collinsさんと言う方です。同じ名前のNBAプレーヤーがいるらしくって、ちろっと検索したらそのひとばっかり引っ掛かってしまって、結局お顔はわからないままです…

>そんなレベルにまで達しているとは言い難い
あらら(^_^;)そうですか。じゃ、これは本当にアメリカの地方オペラの実態「暴露」記事なんですね?。私も大学の小さな劇場でイギリスの地方オペラ団によるオケなし(!)カルメンを見ましたが、パソコン音源のオケはともかく、歌手と演技は満足できるレベルだったなぁ。

>字幕を読んでゲラゲラ
「サロメ」の方も読ませていただきましたけど、映画とかを見に来る感覚で見てるんでしょうね。そこまで大ウケとは、ビックリです。でも、「サロメ」も「エフゲニー・オネーギン」も喜劇ではないはず…(笑)

>Jason Collins
ぱっとネット上を探してみたら、オフィシャルHPを見つけました。(同名の有名人がいる場合は、名前にoperaとかtenorとかの単語をくっつけて検索するとお目当ての人が見つけやすいですよ☆)この人であってますか?一応仕事のページに○○オペラでレンスキーと書いてあるので間違いないと思いますが…。
http://jasoncollinstenor.com/

確かに、爽やかな容姿。オペラだけじゃなくて、合唱曲のソリストや声楽曲などでも活躍していらっしゃるんですね。聞いてみたいけどイギリスには来ないかしら。

サルダナさん:
おお~~正にこのひとです!まぁ、アップで見るとこんなもんかって感じですが、遠目に見る分には、問題ありませんでした。今年のバイロイトでトリスタンを歌ったロバート・ディーン・スミスに似てるかもしれませんね。

(場所の件で、一部コメントを書き換えさせて頂きましたm(__)mそのままの語句で検索に引っかかって来られると、マズイので…って、別にやましいことをしているわけではないんですけどね^^;駐妻は辛いのよ)

>聞いてみたいけどイギリスには来ないかしら。

そうねー、殆どアメリカ限定と言う感じですね。ヨーロッパに進出するのも、なかなか大変なのかもしれませんね。

いやぁ~、これはツッコミどころ満載の楽しそうな上演ですねぇ~。でも、『オネーギン』が苦手のオデュッセウスにとってはこっちのほうが面白そう!!意外に気に入るかもしれません!!

オデュッセウスさん:

もしあの作品の「地方色」が苦手だと仰るのならば、確かに西部劇仕立ての「ゆーじーん」は、案外イケるかもしれませんね(^^;
その代わり、ホントに歌手とかオケには目をつぶらないといけませんけどね(笑)

如何ですか、アメリカにいらっしゃって「オネーギン」をご覧になるのは?^^;

そうですねぇ~、アメリカに行ってメトに行くんだったらこっちのほうが興味あるかも?でも、『ゆーじーん』じゃなかった、『エフゲニー・オネーギン』は好きになりそうもないかな?

メトといえば、今週末来日公演のチケットが発売開始になります。ドミンゴをジークムント役で出演する『ワルキューレ』にはかなり興味があるのですが……。安い席限定で勝負します!!ダメだろうな……。

上の書き込み、ちょっと矛盾がある気がするのですが、要するに、日本にいても触れるチャンス(CDやDVD、来日公演など)があるメトよりも、どうせ行くなら興味がある、という意味です。

最近のDVDは、これまでなかなかCDや映像が発売されなかったヨーロッパの劇場のライヴ上演が商品化され、嬉しいです。願わくば、ドイツの劇場、例えばヴァラシエンヌさんも実演をご覧になったニュールンベルクの『リング』や、マンハイム、ブレーメンなどの劇場のものが商品されて欲しいですね。

メトやサンフランシスコ、シカゴ以外のアメリカの劇場のものは難しいでしょうかね?

すみません、連続の登場です。

本日発売の『音楽の友』誌によると、スロヴァキアの首都プラティスラバの歌劇場で、P.コンヴィチュニー演出の『エフゲニー・オネーギン』が上演され、素晴らしい舞台だったようです。

コンヴィチュニー氏は、このプロダクションを日本で上演したいと発言しているようです。もし実現すれば、是非会場に足を運んで、少しでも『オネーギン』嫌いが払拭できれば、と思います。実現するか???

あら!オデュッセウスさん、たくさんカキコミして下さって、嬉しいです(^^!

>ワルキューレ@メト来日公演
そうですね。年齢的にもドミンゴのジークムントは、日本で聴く最後のチャンスかもしれませんが、何しろ値段が…(^^;
安い席が取れるといいですね(^。-)-☆

>メトやサンフランシスコ、シカゴ以外のアメリカの劇場のものは難しいでしょうかね?

う==ん、この3つ以外ですと、ワシントンやヒューストンなどもそれなりに有名ですし(どちらも遠いですから、行ったことはありません^^;)どちらともネット放送を積極的に行ってますね。
ワシントンは、確かドミンゴが芸術監督だったか何かをやっているんじゃなかったかしら?ということは、いずれ映像収録にも力を入れる可能性がナキニシモ…かもしれませんよ。

>スロヴァキアの首都プラティスラバの歌劇場で、P.コンヴィチュニー演出の『エフゲニー・オネーギン』

コン氏も渋いところでオシゴトなさってますね(@。@;
ということで、探し出して参りましたわ。ブラティスラバのHPを(^^!

http://www.snd.sk/index.php?SID=e0a92e39f5deae3744d5a3a7a6f9e5af&do=frameset.opera

舞台写真も見られますね。こういう場所で、質の高い上演を比較的安価で見られると幸せでしょうね。
行きたくなってきました(^^;

http://www.snd.sk/index.php?SID=e0a92e39f5deae3744d5a3a7a6f9e5af&do=frameset.opera

ごめんなさい。このアドレスから直接は飛べないようなので…
plan predstaveni → 今月の日程表が出てきます。
28日がオネーギンですので、題名をクリック → 配役表の題名部分をさらにクリック → で、写真つきのページへ飛べます。
写真はクリックすると、大きくなります。

如何ですか?オデュッセウスさん?^^;

ちなみに、今年の夏にベルリン・コーミッシェ・オパーでも、アンドレアス・ホモキ氏が「オネーギン」を新演出してます。こちらはドイツ語上演ですが、これもコーミッシェのサイトで、ビデオクリップが見られます。
(もう一日滞在できていれば、見ることが出来たんですけどねーー;残念でした…)

コーミッシェのビデオクリップの見方:
http://www.komische-oper-berlin.de/

Spielplan → Video →Jewgeni Onegin で見られると思います。ムツェンスク郡のマクベス夫人や、フィガロなども見られますね。

>一部コメントを書き換え
あ、名前は伏せていらっしゃるのですね。気付かずに思いっきり書いてしまいました。ごめんなさいm(_ _)m

コリンズさん、確かに超美形とは言いませんが、オペラ歌手としては充分いけてると思いますよ。先が楽しみですね。

サルダナさん:
こちらこそ、逆に気を遣わせてしまってごめんなさいね(^_^;)
色々ありますからね、人生って(笑)

『オネーギン』は、コン氏演出ブラティスラバ歌劇場のプロダクションが来日したらチャレンジしてみます。コン氏は、600人(と書いてあった気がします)程度の劇場で、しかもギャラがよさそうには全く思えないこうした劇場でも誠意ある仕事をするとは、なかなかの人物ですね。

それにしても、ヴァラシエンヌさんは見事なフットワークですね。

今日はメトの人民席(笑)の発売日。どっちでもいいかなぁ~、といい加減な気持で電話したら、あっさり繋がって取れてしまいました。最安席のFはダメでしたが、E席をゲット!!ドミンゴ氏、初経験ですので楽しみ&不安です(笑)。それにしても、あの時間で繋がってもF席が取れないとは……。

>それにしても、ヴァラシエンヌさんは見事なフットワークですね。

ん?!オンライン、オフラインどちらのことを指していらっしゃいます?^^;
オンラインだとすれば、ヒマジンのなせる業です(^^;

メトの来日公演、チケットゲットおめでとうございます(^^!先の話ですが、感想楽しみにしてます(^。-)-☆

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