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R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》 ザルツブルグ2001年

プロローグ相当顰蹙ものの演出だったという噂はかねがね聞いていましたし、先日こちらのコメント欄でもオドカサレタ?!ので、内心ドキドキ…だったんですが…

ふふふ…面白かったです(^^;
最近は集中力を欠いている為、一つの作品を飛ばし見しないで、最後まで一度で見るなんて、滅多にないんですが、これは一気に見てしまいました。

このオペラ、特に前半の「プロローグ」では、もともとお芝居に近い形態ですし、こういうのを違和感なくこなせる最近の歌手さんたちは器用だな…と思います。台詞だけの執事長や、音楽教師も見てて飽きませんでした。
舞台も直線的でシンプルですし…

ツェルビネッタと道化たち。特にハルレキンの目つきが…怖い。 確かに楽しい旋律がついているこの箇所での、道化くんたちとツェルビネッタに、ここまでやらせる必然性はあるのか?!ですが、見方によっては「金とセックスに飢えたドラッグ中毒のロックグループ?!」に見えないこともないので(道化たちの風采はともかく、路線としてはもしかすると「病んだティーンエイジャー」路線かも…)これはこれでもいいんじゃないかしら?

エログロセックス&暴力シーン、もちろん私も大喜びで積極的に見たいとは思いませんけど、オペラの中で何となく納得しちゃうというか、うまくハマる瞬間があると思います…

恥ずかしく見えたとしたら、演技者に問題があるのであって(確かにこの手の場面は、容姿もさることながら、相当演技達者でなければ、辛い…歌手にとっては大変ToTだと思います)決して演出全体のせいではないと思います。

この箇所、純粋に音楽的なアンサンブルとしては、ドレスデンの映像パリの放送録音の方が、よくまとまっていると思います。ツェルビネッタもパリの方が、ノビノビ歌っている気がします。
彼女、喉の手術をしたのは、いつ頃だったでしょうか?

フランツーヨーゼフ・ゼーリヒさん ところでこの映像の、何となく西郷隆盛さんの銅像に似ている風采トゥルファルディン君(←道化の名前を覚えたのは、ナントカの効果あり(^o^)/~~~)どっかで見たことある〜と思ったら、コヴェントガーデンの「魔笛」のザラストロだったフランツーヨーゼフ・ゼーリヒですね。この前話題にした、ムーティの新盤「ドン・ジョヴァンニ」の騎士長もこの人でした。

(ちなみにゼーリヒ氏は’62生まれ。この12月-1月にシカゴリリックオペラで、ザラストロ歌う予定です)

妖精たちの一人に、同じ「魔笛」の夜の女王のディアーナ・ダムラウも出てますね。こちらは、姿を見てもわからなかったのですが、ソプラノの声が図抜けてスカーンと響いてきたので、アレ?!と思いました。で、キャスト確認したところ「ディアーナ・ダムロー」と紹介されていました。

「飲み」で意気投合?^^!ツェルビネッタとアリアドネ このツェルビネッタと仲間たちに限らず、登場人物は全員「病んでいる」っぽいのが、この演出のミソでしょうか。

特にアリアドネとバッカス、ハマってるかも…(^^
アリアドネ、バルセロナの《ワルキューレ》映像の時には、ぴょこぴょこした歩き方が気になったんですけど、この精神状態不安定アリアドネだと、まさにピッタリって感じ。
もしかしてアル中?!このアリアドネ…でも決まってますネ アリアドネは、個人的には強い声のソプラノが好みなので、この声もいい!と思いました。もう少しニュアンスがあれば、尚よかったんでしょうけど…

バッカス、ドレスデンの映像と同一人物とは思えません。今回の映像の方がかわいいですね。結構器用なひとなのかも…ホントに雰囲気、全然違うので、前もって知らなかったら、別人だと思ったかもしれません。
とくれば、パリの上演どんな風だったのか、ますます気になります。ああ、音だけでも充分魅力的ですけど、やっぱり映像も見たい!

バッカスとアリアドネ。どっちもアメリカン。でかっ! 歌の方も、強い声のアリアドネとの相乗効果もあって、3つのソフトの中では一番よかったような気がします。
(演出上は、決して「強い男」じゃないんですけど、今回に限っては全く気にならなかったですね^^;)

それと、日本語字幕付きで見たのは久しぶりだったので、このオペラの歌詞の意味も考えさせられました。歌詞の内容、きちんと把握したいです。

いつもオペラを聴く時に、生意気にも「発音がどうのこうの」とか言ってる割には、歌詞の内容には比較的無頓着で、旋律優先で聴いちゃってたんですが…

ホフマンスタールって、やっぱり洒落た人ですよね(^。-)-☆

そしてその歌詞に、ステキな旋律をつけたシュトラウスも…やっぱり大好きだな:−)

・edcさん宅の鑑賞メモはこちら

主な配役:

プリマドンナ/アリアドネ:デボラ・ポラスキ
ツェルビネッタ:ナタリー・デッセイ
テノール歌手/バッカス:ジョン・ヴィラーズ
作曲家:スーザン・グラハム
音楽教師:ジョン・ブレッヒェラー
ダンス・マネージャー:ジェフリー・フランシス
執事長:アンドレ・ユング
道化:ラッセル・ブラウン、ハインツ・ゲーリヒ、フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
妖精:ディアーナ・ダムロー、アリス・クート、マルティーナ・ジェンコーワ

指揮:クリストフ・フォン・ドホナーニ
演出:ヨッシ・ヴィーラー&セルジオ・モラービト 

《関連記事》

・2004年10月4日:速報!ベームの『アリアドネ』映像

・2005年10月27日:ドレスデン1999年 映像鑑賞メモ

・2005年10月28日:ザルツブルク1965年 映像鑑賞メモ

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オペラ:ディスク感想メモ」カテゴリの記事

コメント

ごらんになったんですね、これ^^! テレビ放送があったとき、けっこう話題になった記憶があります。全体的におもしろいという意見が多かったと思います。ツェルビネッタ、最初はちょっと苦しそうかも・・だったけど、慣れると気にならない程度ですね。さっそくですが、待ってましたとばかりTBします。

>トゥルファルディン君
>妖精のひとり

へ〜〜 気がつきませんでした。見てみましたが,確かにそうですね。でも、特に妖精のほう、ほんとに「夜の女王」とは全然雰囲気が違いますね。同じ「魔笛」の共演者なんですね・・・

>バッカス
これも知らなければ、同じ歌手とはちょっとわからないかも・・・ こっちのほうが、はまってると思います。

edcさん:

こちらも、待っておりました(^^!噂に違わぬ面白さで、充分満足できましたよ。
アリアドネブームは、留まる所を知らないかもしれません(^^;

>>トゥルファルディン君=ザラストロ@ROH

はは^^; パリの録音を散々聴いたお陰で、音だけ聴いてもこの役のパートは、ほぼ把握できるようになりましたからね(^_-)-☆
これからは、トゥルファルディンおたくと呼んで下さい<o( ̄^ ̄)o> エッヘン!!

>>妖精のひとり=夜の女王@ROH

これはね~~キャスト確認しなければ、気がつかなかったと思います。
全く雰囲気が違いますものね。

>>バッカス
>こっちのほうが、はまってると思います。

同感です(^^!なかなか可愛い顔しているんですねー、彼:-)

>西郷隆盛さんの銅像に似ている風采のトゥルファルディン君
わはははは(^o^)似てる似てる!眉毛太いし!へえ、あのROHのザラストロと女王が道化と妖精ですか~。ダムラウはまだ劇場専属で歌ってた頃ですね。

これだけいっぱい映像を紹介してもらうと、やっぱりひとつくらい見たくなってきますね~。ちょっと探してみようっと。

サルダナさん:

>ゼーリヒさん
ねぇ、似てるでしょう?!特にあの「魔笛」だといかにも「オイドンはザラストロでごわすm(__)m」とかって、しゃべり出しそうなんだもん(^^;

>これだけいっぱい映像を紹介してもらうと、やっぱりひとつくらい見たくなってきますね~。

私の手持ちのコマ(笑)は、今日紹介したベームの映画版が最後ですけど、多分edcさんがもう一つ、メトの映像を紹介して下さると思いますので、そちらも期待しましょう(^^!

このザルツブルグの映像は、テレビ録画ですので残念ながら市販されてませんけど、再放送若しくは商品化を望みたいですね。

大概は安ければ輸入版映像で充分…と思うんですけど、この作品に限っては、一度は日本語の字幕付きで是非見て頂きたいです…
とはいえ、現在国内版で入手できるのは、ベームの'65盤だけかしら?

小生、長く「アリアドネ」がシュトラウスの中で一番好きな作品でしたが、この頃は「影なき女」に移りつつありますので、「『影なき女』祭り」もやって頂ければ有難いです。録画映像まで見る元気も予算もありませんので、貴サイト読んで見たような気になろうと思います。

>パリの上演がどんな風だったのか
ヴィラーズのバッカスは、やっぱりヌボ~ッという感じでしたねぇ。声は立派でしたが。
トゥルファルディンには全然注意してなかったのでまるで憶えてません…。
ペリーの演出は、プロローグはチロルだかベアヒテスガーデンだかみたいな感じの山荘、オペラは現代ギリシャ(ナクソス島?)が舞台で、後者では工事現場に居候しているホームレスがアリアドネ、そこに車でツェルビネッタに率いられたアロハシャツにショーツ、日除け帽といった俗悪ヴァカンス客スタイルの4人組がガヤガヤ参入、ツェルビネッタはビキニ姿で大ハシャギといった設定でした。ペリー自身によれば、当時ギリシャはオリンピック開催前でそこらじゅう工事中だったのでそのイメージをそのまま舞台に移したとのことでした。ぺリーという人は、アイデア豊富で気の利いたギャグもあり、娯楽としては機能的で良く出来た楽しい舞台を作る人だけど、それ以上の、例えばホフマンスタールの、愛の形についての洒落ていてかつ人間感情の奥底にも踏み込んだような洞察といった面はまるで抜け落ちてしまうのが残念と言えば残念です。その意味では、サルツのヴィーラー・モラービト演出と同方向と言えるかも知れません。ペリーはラモーの「プラテ」演出だけは、楽しさに加えてギリシャ神話や仏古典劇時代との関連にも配慮した優れたものでしたが、その他は大体レヴュー的発想の娯楽路線だったという印象があります。

>彼女、喉の手術をしたのは、いつ頃
ドゥセ(デッセイの表記が定着しかけてるけど不正確。因みにドレスデンとパリの上演で作曲家を歌っているSophie Kochもロレーヌ家系ヴェルサイユ育ちの仏人で、本人が言うところでも「ソフィー・コッシュ」と発音するそうです。小生が聴いたバルツァ以来最良の作曲家!)は、喉の手術を2回しています。1度目は、02年7月に左声帯ののう胞を除去。個人的には00年6月の「ハムレット」で既に何だか声の滑らかさにひっかっかりが出てきたなぁと感じてました。手術後の03年7月のリサイタルでは、やはりかつての潤滑さは失われたと感じましたが、03年11月のパリのアリアドネは、そんな懸念は完全に吹き飛ばしてしまうかつてのグルベローヴァに勝るとも劣らない見事な出来で大いに安心しました。しかし04年11月パリのアリアドネ再演はキャンセルで、04年11月に2度目の手術、今度は右声帯のポリープを除去したとのことです。第2回手術後、05年7月にリサイタルを聴きましたが、個人的にはまたしても翳りを感じてしまいました。仏紙評は「完全復活」を謳っていましたが。

04年11月のパリのアリアドネ再演では、アリアドネがダライマンからクリンゲルボルンに(前者が少し良いかな)、ツェルビネッタがドゥセからペトロワに(前者が断然上、後者の方が若いから体はきれいでしたが)、音楽教師はウィルソン=ジョンソンからベーアに(大差なし、ベーアはオペラでは引っ込んじゃう人ですね)、舞踏教師はクラークからフランシスに(前者が上)に交代。指揮はスタインバークに変わりP・ジョルダンでしたが、これは若いジョルダンの方がずっと良かった。彼は親父より明らかに才能あると思います。スタインバークも堅固で悪い指揮者ではありませんが。


助六さん:

コメントありがとうございます。フランス全土で暴動が広がっているとのことですが、お住まいの地域は大丈夫ですか?

>「『影なき女』祭り」もやって頂ければ有難いです。

うっ(^^;
実はですねー、シュトラウスの作品のなかでは、この作品に最も手を焼いておりまして…^^;
すごく気になるんですけどね。

まだ「ガツンと」くる演奏に出会えていないんです…数をこなせば、いつか、助六さんのように好きな作品が「アリアドネから影なき女へ」移る日がやってくるかもしれませんね。

パリのアリアドネの詳細情報、ありがとうございます!お話を伺ったら、ますます映像が見たくなりました。この上演、そちらではテレビ放送されたという情報を読んだことがあるので、録画を探しているんですけど…

>俗悪ヴァカンス客スタイルの4人組

わ、わかりました(^^;
これはアロハシャツ姿の4人組の写真がネットで見られますので、多分そんな感じだったんだろうなと想像していたので…^^;
道化役の一人一人なんて、よほど注目していなければ、わかりっこないと思います。
私もこの録音を最初に聴いた時には、聴き取りテストをしているような気分になりましたし。

>ドゥセ(デッセイ)
こちらもありがとうございます。ということは、この放送録音では、一度目の手術後…ということですね。

03年と04年では、やはり指揮者とキャストが微妙に違うんですね。今シーズンは、再演ナシでしたよね。もう再演されないのでしょうか?

>フランス全土で暴動が広がっているとのことですが、お住まいの地域は大丈夫ですか?

ご配慮有難うございます。
新聞では「外出禁止令施行」とか活字が躍っていてちょっと怖いような印象を受けますが、一般人の生活圏での騒動は事実上皆無です。
ニューヨークで言えば、サウスブロンクスとかスパニッシュ・ハーレム内部で暴動が起こっているようなもので、普通の生活者が通る地区ではないからです。しかもニューヨークの上記地区とは違い、よそ者は足を踏み入れるのも事実上難しい「コワイ」地区という訳ではありません。小生もこうした地区に一人で足を踏み入れたことは何度かあります。勿論目立たぬ安い服装で写真を撮ったりなどしない程度の用心は必要ですが。
今日も仏政治学者とも話したのですが、彼ら(アフリカ系未成年者が多い)の暴動には、失業・差別・仏移民同化政策の失敗といった背景も勿論あるにせよ、彼らには要求も政治的組織性もイスラム主義的背景も皆無で、仏TVや米CNNにまで自分たちの街の放火が映るのに味をしめた子供の遊びに近いという面も見逃してはならないとの意見でした。ヴィデオ・ゲームで育った非政治的移民世代が、異例の好天も手伝って夜警察相手のゲームを実地で続けているという訳です。

書き忘れてました。今回の暴動の出発点となったパリ北東郊外のクリシー・スー・ボワ市は、ロベルト・アラーニャの故郷です。シチリア移民2世の彼は、完全にフランス人となって仏社会に「同化」した訳ですが、アフリカ系移民は3世世代でも同化できずにいる訳です。文化的距離の大きさに由来する彼ら自身の同化能力の問題とフランス社会側からの差別感情が不幸な悪循環に陥ってしまった形です。諸エスニック・コミュニティーの並存である米社会と異なり、「仏語と自由・平等の仏共和国への同化」を移民統合モデルとしてきた仏社会の危機と言えます。

助六さん:

興味深いお話、ありがとうございます。色々考えさせられますね。

>仏TVや米CNNにまで自分たちの街の放火が映るのに味をしめた子供の遊びに近いという面も見逃してはならない

確かに、CNNインターナショナルでの連日の報道の裏側には、ご指摘の点がなるほど…と納得せざるを得ない側面があるように感じます。

>ロベルト・アラーニャの故郷

元々彼はシチリアの方だったんですか。知りませんでした(^^;

>「仏語と自由・平等の仏共和国への同化」を移民統合モデルとしてきた仏社会の危機と言えます。

以前から気になっていたのですが、フランスは移民に対して、比較的寛容な気がしてましたが、必ずしもそうではないのですね…

昨今の事情も手伝って、アメリカで外国人が入国する際には、たとえ短期の旅行者でも色々と質問を受けます。
ビザを持っていても、入国の際にはいつも緊張しますしね。

この辺りのこと、私自身も色々と気になるので、いつか自分なりの考えを書いてみたいなと思ってます。

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