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ショスタコーヴィッチ「リア王」から「道化の歌」その1

★2009年11月5日:Youtubeに再生リストをアップしました。

以前放送された《ショスタコーヴィッチとモーツァルトのお誕生日コンサート@London.2006.2.17》でのプログラムの一つに、ショスタコーヴィッチの「リア王」から「道化の歌」がありました。

この曲に関しては、聴いた直後は気分が高揚して「ロシア語頑張るぅ~~」とか言ってたくせに、最近では「意味がわからなくても、私が聴いていて耽溺できればいいのよ!」と、さじ投げ状態だったところ、なんと!エフゲニー・ネステレンコ(Evgeni Nesterenko:1938年モスクワ生まれ)の歌う「ショスタコーヴィッチ歌曲集(発売元:ビクター音楽産業株式会社  VICC-40082-83)国内版」というありがたいCDを、地元の図書館で借りることができました。

(日本に帰国してきて、よかった…と思えた一番の出来事かも^^;)

アレクサンドル・ヴィノグラドフ唯一の独唱CDであるChant d'Amour - Liebeslieder - Love Songs(念のため:独りで出しているCDではなく、若手歌手4人で一枚のCDを出してます。彼が担当したのは、最後の5曲のみ)で歌っている「ミケランジェロ歌曲」等、他の歌曲についても解説があるのですが、まず「道化の歌」から、私自身の勉強(というとおこがましいですが…)を兼ねて、少しずつ歌詞を紹介していきます。

尚、この「道化の歌」を含めた「劇音楽 リア王作品58a」のCDは他にも出ているようですけど、全て輸入版のようですね。
わかりやすいリストはこちら。
「道化の歌」誕生の背景その1
「道化の歌」誕生の背景その2…というか、ジングル・ベルとの関係?!

今回私が借りてきた国内版も、既に廃盤みたいですしね。図書館に感謝、感謝です。

ネステレンコ盤は、ピアノ伴奏です。オケ版に馴染んだ耳には地味に感じますが、歌唱スタイルの違い等も興味深いです。

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※以下引用は「ショスタコーヴィッチ歌曲集(発売元:ビクター音楽産業株式会社 VICC-40082-83)」より、大塚 明氏の解説。

(シェークスピア劇「リア王」より)

「リア王」は沙翁の最大傑作と言われるが、彼の死後、大幅な変更が加えられた。要するに、原作のあまりにも残酷なところをやわらげ、道化のおもかげは削られてしまった。しかし、1838年 マクリーディの原作上演を機に、その奇怪な全貌がこんにちのわたしどもの目にも入るようになった。主な登場人物はすべて殺されるか死ぬ。道化役も復活する。むしろ前半は、道化役の独壇場の観がある。

彼は最後まで王に忠実ではあるが、真実を述べるあまり、くびり殺される。その言は、ほとんど《歌う》というト書きのあるため、1940年の上演にさいしては、作曲者が必要となった。いわば 、原作は音楽仕立ての芝居なのだ。

道化の歌 OP.58a
露訳:サムイル・マルシャーク(Samuil Marshak:1887-1964) ロシアの詩人。革命後、ソビエト最初の子ども劇場をつくり、以後、たくさんの詩・戯曲を書きつづけた。

《道化》役とは、往時、宮廷において王と対等に機知縦横のせりふで人びとを笑わせる職だが、リア王80歳前後、彼自身は約60歳ではないかと言われる。リゴレットのようなものだが、かくも 忠実、誠実、戯曲そのものの柱となったものは、類例を見ない。対訳で《ばか》とあるのは自分のことである。

その言は痛快、それを婉曲に歌うので、この誌面では、とうてい説明できない。最小限、幕場を付しておく。その《真実の声》にひかれて、ショスタコーヴィチは作曲し、うち10曲を選んでチクルスとした。

★2009年11月5日:Youtubeに再生リストをアップしました。

1.第1幕第4場 悲痛な調子で、悲劇の開始を予言する。

音声クリップ

Tot,kto reshilsa po kuskam
Stranu svoyu razdat',
Pust' priobshchitsa k durakam:
On budet mne pod stat'.
Mi stanem s nim ruka k ruke:
Dva kruglikh duraka:
Odin v dratskom kolpake,
Drugoy bez kolpaka.
自分の国を 細切れに
くれてしまうと 決めた奴は
ばか者仲間に 加わるがいい、
そいつは わしに ぴったりだ。
わしらは たがいに 腕くんだ
二 人の 大ばか者なのさ。
こちらは 道化帽をのっけてる、
そちらは かぶってないだけさ。

2.第1幕第4場 中間部に朗唱があるが、これは王の質問への答え。ブリテンでは、子どもを罰するのに、ズボンを脱がして苔で打つ風習がある。

音声クリップ

Dlya durakov pechal'niy den':
Vse umiki strani
Mozgi nadeli nabekren'
I stali mne ravni.

(*1)Ya priuchilsa pet's tekh por,kak ti,
Lir,sdelal dochek svoimi mamashami,

Dal im v ruki rozgi i spusti s sebya shtanishki.
Oni zaplakali ot schast'ya,
A ya zapel s toski,
Uznav,shto moy korol' bez vlasti
Igraet v duraki.
ばかどもにとっては いやな日さ。
国中のお利口さんたちが みな
考え方を すっかり変えて、
わしめと 同じになっちまった。

(*1)わしが歌うようになったのは、
リアよ、お前さんが娘どもをお袋あつかいし、その手に苔を渡し、ズボンを脱いだ時からさ。

二人は 思わず嬉し泣きで、
わしはがっ かり、嘆き歌、
わしの王様が 権力をなくし、
「ばか(*2)」で、遊んでいるんだから。
(*1)太字部分は、原作 ではリア王と道化の問答。
(*2)ロシアのトランプ遊びの一種。

3.第1幕第4場 背に腹は変えられぬの意。

音声クリップ

Khlebnie kroshki,chortvie korki
Mishka golodnaya vspomnila v norke.
パンのかけらを、固い皮を
ひもじくなった鼠は穴で思い出す。

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コメント

かわいいスキンですね。これ、朝日新聞の夕刊に連載してます。

記事も興味深く読ませていただきました!つまり、「道化の歌」は劇の上演に際して作曲されたということでしょうか。さすが、サントラなどでも活躍したショスタコーヴィチ。

>「リア王」は沙翁の最大傑作
今どきシェイクスピアのことを書くのに沙翁はないでしょう(笑)、と反応してしまいました。結構昔の記事ですか?評論家がお年なのかな?

投稿: Sardanapalus | 2006/05/08 20:42

サルダナさん:

>これ、朝日新聞の夕刊に連載してます。

あら!そうだったんですか(^^
今までのスキンも気に入っていたので、暫く変更するつもりはなかったんですけどね、キャラクターモノに弱いので、つい…
ちなみにこれは「マリーアントワネット版」ですけど、もう一つ「オスカル版」ってのがあって…迷ったんですが、暫定的にこっちにしてみました(^^;

こんな地味な連載に反応してくださって、嬉しいです。

サルダナさんの書き込みの後、ちょっと追記しておきました。
ショスタコーヴィッチについては、作曲家そのものに対する関心が強い人が多いのかしら?日本語で読める詳しいサイトが複数ありますね。有難いことです。

私の付け焼刃の知識では到底こなせませんし、私もそれらのサイトを読みながら勉強中です。

それらのサイトでも「道化の歌」の歌詞に関する言及は、私がリサーチした範囲では見つからなかったので、転載という他力本願ですが、こういう形を取らせて頂きました。なかなか意味深な歌詞でしょ?


尤も、ショスタコーヴィッチの音楽を聴くきっかけになったのが、好きな歌手がよく歌っているから…なーんていう不純な動機なのは、私くらいかもね(^^;

>今どきシェイクスピアのことを書くのに沙翁はないでしょう(笑)

ね!一応、そのまま転載しておいたほうが無難かな、と思ってそのままタイプしたんですが、違和感ありますよね、やっぱり(笑)

リブレットの解説を書いていらっしゃる方についても追記しておきました。詳しいことはわかりかねますが、やはりロシア音楽、とりわけショスタコーヴィッチに関する論文?など、出していらっしゃる方のようですよ。

投稿: ヴァランシエンヌ | 2006/05/08 23:11

ヴァラシエンヌさん、お久しぶり!!そしてお帰りなさい!!

彼氏のこととは関係ない話題ですが、地元公立図書館の視聴覚コーナー、これはなかなかのものですよね。オデュッセウスも既に国内盤が廃盤で入手できないマイナーオペラの対訳をここで多く入手しています。居住地の市立図書館と勤務地の市立図書館、そして県立図書館、この3つを駆使すればかなりの作品の音源・対訳を入手できてしまうのです!!

因みに、対訳はコピーしますが、音源はコピーしません。購入したCDですら未聴CDが山のような状態ですので……。

投稿: オデュッセウス | 2006/05/09 08:43

オデュッセウスさん:

ただいま~~です(笑) 
なかなか日本での生活に馴染めずにいますが、図書館だけは充実した地域に住めて、よかったと思います。
その分税金も高いですから、しっかり充実させてくれないとね(^^;

前に住んでいた地域にも大きな図書館があって、そこでは館内での試聴のみだったんですが、今度の住まいは貸し出しOKなので、喜んで借りまくってますよ~~

好奇心はあるけど、即買い!とはならない作品でも気軽に聴く事ができますし、これで暫くは節約できそうです(笑)

何も考えずに音楽に浸って、Happyな気分になるのも楽しいですけど、もう少し掘り下げてみたいな…と思うと、楽譜の読めない私にとっては、対訳とか解説が、どうしても必要になってくるんですよね。

ここに住んでいる間に、いっぱいコピーしておこうと思います(^^;

投稿: ヴァランシエンヌ | 2006/05/09 13:32

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