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4回目@カルメン 新国立劇場

平日昼公演。一階左サイドの、前の方のブロックではあるんですが、微妙に後ろの方での鑑賞。平土間での左サイドは、今回の上演ではお初。逆サイドからだと、歌手の表情や動き方もまた見え方も違うので、面白かったです。

やはり注目はモンティエルのカルメン。声楽的にどうのこうの…はともかく、回を追うごとに、女性らしい「恋する女」な細やかな仕草や表情付けが深まっているような気がします。

心理表現がどうのこうの…なオペラではないものの、これだけ回数を重ねて実演に臨めば、作品とどっぷり向き合っている気分も高まります。いくらエスカミーリョが目当てでせっせと通っているとは言え、所詮は脇役。やはり主役はカルメンとホセですから、二人の歌い方や役作りが私の好みに合わなければ、楽しめません。

これまでの感想メモで、ミカエラについては殆ど触れていませんでしたけど、意図的に外しているわけではなく(^^; この役にはあまり感情移入が出来ないから…

大村さんのミカエラは「自立したミカエラ」という感じの感想が多く見受けられますが、確かにそんな感じ。アリアも力強く、綺麗に聴かせてくれますしね。

でもミカエラって、ある意味カルメンよりも強いんじゃないかと思います。だって、ミカエラには「故郷」と「彼の母親」という強力な後ろ盾があるけれど、カルメンにはホセを引き止めるバックボーンは、自分自身が信じている魅力以外には、何もないんですもの。

カルメンは、常に自分自身の心と身体を張って、男を自分のものにしている「女」です。
それを、魔性の女とか、毒のある悪女と括ってしまうのは、あまりにも短絡的かな…なんて思っています。

3幕でエスカミーリョが立ち去ったあと、お互いにうっすらとその存在を知りつつも、差し向かいで対面したことがなかったミカエラとカルメンが初めて相対しますが、ここでは、心理的には完全にミカエラの勝ちです。
「お母さんが待っているの、故郷が待っているの」とホセを引き戻そうとするミカエラを見るモンティエル・カルメンの目つきの、なんと悲しそうなこと。定住地を持たない、ジプシーである彼女には、決して理解できないし、入り込めない世界でしょう。

カルメンがホセを捨てた、というよりも、カルメンはホセと自分は、永遠に理解し合えないんだ、ということを、この瞬間に悟って、別れを決めた…と捉えることもできるんじゃないかと思います。勿論、その決心がついた心理的背景には、エスカミーリョという、新しく《自分自身》に言い寄ってくる男がいるから。

自分自身だけを愛してくれる男が次に控えているわ、と思えば女は、限りなくしたたかになる生き物ですから。受身でもあり、能動的でもある。そういう意味で、モンティエル・カルメンはあらゆる「女」が持ちえる要素の全てを持っているとも言えるのかもしれません。非常に芯が熱く、情の濃い、女らしいカルメンです。

で、4日目のエスカミーリョですが…

ま、いいんじゃないんでしょうか(笑) この日、待望の投げキッスを初めてやってくれたので、気持ちよく歌えたんでしょう、きっと(^^;

回を重ねるごとに、ノリノリな感じ(と言っても、やたら猛々しく歌い崩すのではなく、ちゃんとエレガントに、旋律を大事にしながら)で歌っている様子は窺えるので~~

あ、そういえば、平土間なのに双眼鏡を使って覗いてしまいました(^^; 
そして目の色、ホントにグレーじゃん!と、相変らず全然違うところで、変な感動をしながらニヤニヤしていた私でした。

ついでに忘れないうちに、舞台写真を買っておこうと思って、1枚300円の写真をゲット。ネットで見られるものと同じですが、さすがにプロ仕様で現像してあると、鮮明で綺麗に見えるのが嬉しいです。

*************************

カルメン@新国立劇場 4日目(2007年12月4日) 1階左サイド前から○列目での鑑賞

【指 揮】ジャック・デラコート
【演 出】鵜山 仁

【カルメン】マリア・ホセ・モンティエル
【ドン・ホセ】ゾラン・トドロヴィッチ
【エスカミーリョ】アレキサンダー・ヴィノグラードフ
【ミカエラ】大村 博美

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カルメン@新国立劇場 2007.11~12」カテゴリの記事

コメント

今はちょうど劇場でご覧になっている頃でしょうか。

モンティエル・カルメンの役作りの考察、読み応えがありました。私はこんなに深く明確には語れませんが、そうそう、そうなのよ!という気持ちです(笑)

登場人物の微妙な表情など、1度きりの鑑賞ではなかなか細かく観察できない部分もありますね。
不可能とは知りつつ、もう一度観たいものです(笑)

>自分自身だけを愛してくれる男が次に控えているわ、と思えば女は、限りなくしたたかになる生き物ですから。

ここ、共感しちゃいましたよ~(笑)
女性のほうから男性を追い求めると女はとたんに力を失います。そうでなくてもカルメンはロマですし、寄る辺の無い身の上だからこそ、本能的に強者となれる方を選んだのではないかと。
元々カルメンのほうが最初にホセに惚れていますからね。

バルツァの、「愛しているからこそ別れる」的な解釈も身につまされますが、モンティエルの潔いカルメン像も好き!! どちらも「根っこ」は共通していますね。

ナオさん:

歌手本人に尋ねてみたら、実は全然違う解釈だったのよ…ということもあるかもしれませんね。

でも、たとえ聴き手の解釈と歌い手の解釈にズレがあっても、こうしてあれこれ考えるのが好きで、駄文を書いておきたくなる聴き手としては、同じプロダクションに何度も通うのは、映像やCDの繰り返し鑑賞では、得られない「ダイゴミ」をも感じてます。究極の贅沢ですね。

しまさん:

共感して下さって、嬉しいです(^^)ありがとうございます。

> 女性のほうから男性を追い求めると女はとたんに力を失います。

いわゆる「惚れた弱み」ってやつですよね^^;
身につまされます…(笑)

> 本能的に強者となれる方を選んだのではないかと。

なるほど。私が言わんとしていることも、そういうことなんだと思います。
「恋する女目線」で語ると、カルメンがやったことは(勿論物語なので、極端とは言え)至極当たり前の選択に思えるんですよね。

色んなカルメン像がありますが、聴き手の方も単なる悪女、毒のある女、と解釈しているだけでは、あまりにも勿体無いような気がするかな~~なんて(^^;

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