千秋楽@カルメン 新国立劇場
初日同様、日曜マチネの公演。4回目同様、平土間左サイドからの鑑賞ですが、最終日にして、ようやく中央寄りの一番隅の席をあてがってもらえました。文句なしに、今までで一番いい席。前を遮るものもなく、まさに「私だけの空間」気分を充分に味わってきました。
5回目の時にTVカメラが入っていましたが、今回も入ってました。カメラマンの男性に突撃質問をした隣の席の、やや年配の女性からの情報によると、
《来年2月の芸術劇場で、ハイライトを放映する予定》だそうです。とりあえず、今後の放送予定など、しっかりチェックしたいと思います。
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さて、5回目は、どうも皆さんお疲れモードのようで、イマイチ乗り切れてなかった感が強かったですが、さすがに最終日。序曲が始まった途端、これはイケそう!って予感がしました。そしてここ一番、という時の歌手さんたちの集中力の高さには脱帽しました。
全体的には文句なしに、最終日が一番出来が良かったと思います。特に2幕ラストの、合唱+ホセとカルメンの「お姫様抱っこ」場面…
こういう合唱とソリストの声がぐーっと重なる場面は、この作品に限らず、私の好みでもあるんですが、こういう場面で、自分の感性にピタッと合った時「人の声の力ってすごいなあ…」と、しみじみ思います。
前回アップアップ気味だった、タイトルロールのモンティエル、昨日は渾身の力を振り絞った…という感じで、本当に素晴らしかったです。どちらかというと上品過ぎて、凄みに欠ける…という感じの感想が多かったと思いますが、昨日はその《凄み》もあり、また、いつものように佇まいも美しく、随所で目頭が熱くなってしまいました。幕が下り、ホセと二人で最初のカーテンコールに出て来たときには、全てを出し尽くした…という感じで、泣いていました。私もその様子に、ウルッと…
ホセのトドロヴィッチも、私は彼の単細胞系マッチョで、微妙に空気が読めない感じの役作りはとても気に入っていたんですが、昨日はそこに加えて、破滅的な男の狂気も感じました。
特に、3幕でエスカミーリョが立ち去った後、ミカエラが彼を呼びに来て「今は立ち去るが、俺はまたお前に会いにくるぞ」(←注:意訳)のくだり、ぞくっとしました。この部分、CDで聴くのも割と好きなんですけど、昨日はここんとこのオケの音色が、はっきりと狂気の音に聴こえて、相乗効果を生んでいたと思います。
そして終盤、カルメンとの別れの場面、恥も外聞もなく、好きな女にすがりつき、男のプライドなんてものはこれっぽちもなく、哀れでもあり、見苦しくもあり、脅し、そしてその女を殺して、自分のものにする…とでも言うのかしら、憎くて殺すのではなく、殺して自分のものにする…という感覚は、なかなか日本人の感性としては理解し難いですが、昨日はその流れが(理解できたか?と問われると自信が持てませんが)充分私の心に響いて、気持ちが伝わってきました。
ミカエラの大村さんも、公演が始まった頃は、なんとなく違和感があったんですが、回を重ねると私の方も慣れてきました。
やっぱり昨日が一番よかったと思います。それでもこのキャラクターには、相変らず全く共感できないんですが、それは大村さんのせいじゃなくって、ミカエラというキャラクター自体と私の感性が相容れないせいですから(^^;
そして、前回全く声を失ってしまっていた、ダンカイロの今尾さんも、以前ほどの調子…とはいかないまでも、前回よりかは遥かによくなっていたので、一応回復なさったんでしょう。ほっとしました。できれば、放送は昨日収録のものを、放送してもらいたいです。
そして、千秋楽のエスカミーリョですが…
前回は「トレアドール」の出だしで、声がちょっとざらついていた+歌い急ぎ気味で、仕上げが今ひとつだったので、「★3つよ」なんて冷たいことを言ってましたが、昨日はちゃんと決めてくれました。
逆に、ちょっと気合が入りすぎてたみたいで、「トレアドール」の出だしは少し上ずってましたけど^^; お疲れ様のねぎらいも込めて(かなり甘いかもしれませんが)★5つあげます(笑)
以下は私の感傷モード感想ですので、スルーしたい方はどうぞスルーして下さい。
6回も同じ役(しかも、そんなに深みのある役でもないのに^^;)を聴くなんて…と思ったり、上演が始まった頃は、永遠にこの舞台通いが続くような錯覚も持ったりしましたが、時は止まってくれない。
今日が最後なんだ…と思うと、それはもう、冷静な気持ちではいられないというか、色んなことが頭をよぎって…ある意味、今までで一番緊張しました。
どこから出てくるのかも、どうやって動くのかも、どうやって歌うのかも、もう全部わかりきっているのに、それでも出てくる時まで、あの
"Vivat! vivat Escamillo! Vivat! vivat! vivat!"
の合唱が聴こえると、今までにないくらい心拍数が上がって、喉がからからになって…
「お願い、他のキャストはみんな今日、調子良さそうだから…彼もそうあってくれますように…」と祈るような気持ちでした。実際歌い始めたら、まあ少し上ずってたけど、でも明らかに前回よりかはいい!と思ったし、歌い進めて行くうちに「あ、今日はかなりいいかも…」と思えてきて、しっかり歌声に浸ってきました。
3幕の決闘の場面。派手なアクションは苦手みたいだと散々悪態をついていますけど、勿論カッコよく派手に決めてくれれば、ソレに越したことはないんですけど、まあ…ないものねだりをしてみても、仕方ないので…それが彼の特徴でもあるので、いいです(笑)
前回みたいに歌い急ぐこともなかったので、ホッとしました。
そして、カルメンとの2重唱。見慣れたド派手なショッキングピンクの闘牛服を着て、誇らしげに入場してくる彼を見ながら、いよいよこれで、年明けから大騒ぎしていた私の《エスカミーリョラブラブ期間》も終ってしまうのね…と思うと、もう胸がいっぱい。ここんとこ、今までで一番カッコよく決めてくれたと思います。
「こ、こんなシーンで目頭を熱くするなんて…(*vv」と思いながら、やっぱりジーンとしてしまって。これは完全に、彼の歌の力<私の諸々の感傷でしょうね(^^;
必ず走って出てくるカーテンコール(これは、今回に限らずいつでも、どこででも^^;)も、毎回惜しみなく笑顔を振りまいてくれ、後半3回は投げキッスもしてくれたので、それを嬉しく受け止めながら、最後までしっかり、観てきました。これも見納めなのね、と思うと、やっぱりまたウルウルしそうになったけど、しっかり目に焼き付けておかなきゃ…って、なんとか気丈に?!頑張ってきました。
やはり、この3ヶ月の間に、2度も来日してくれたことに対する感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、一度やってみたかった「全公演完全制覇」が充実気分で終えられたのも、毎公演、彼が元気に歌ってくれたから。DG@リンデン来日の時の、初日のような「殆ど誰にも知られないうちにひっそりキャンセル」なーんてこともなかったですし。それが何よりも、嬉しかったです。
長かったようで、終ってみればあっという間だった、今年最大の私のビックイベントもようやく終わりました。6回も続けて行くと、着ていくお洋服にも限界があり、最初の頃は念入りにお洒落していたのに、だんだんいい加減になってきて、最後の方は、いつも同じ格好で参上する羽目に。
でもここぞ…というところだけは、毎回手を抜かずにお洒落してましたけどね(^^; 気持ちの入り方が全然違ってきますので。我ながら、よく頑張ったと思います(笑)
上演が始まる直前から風邪を引いてしまって、未だに尾を引いている+できればこの2週間の期間中には、来ないで欲しいな…と思っていた、女性ならではの…も、ばっちり来てしまって、決して体調万全で臨んだとは言えないのですが、精神的には充実していたので、お肌のハリもよかったし、リンデン来日の時の教訓から、上演の次の日には、休みを取ろう!と前もって計画しながら仕事のローテーションを組んでいたので、思ったほど、疲れは出ませんでした。(今日も休み^^;)
彼をはじめ、出演者全員の方にお疲れ様…気持ち&この上演期間中、こちらを覗いて下さった全ての方に感謝の気持ちを込めて。
暫くの間、余韻に浸りたいと思います(#^^#)v
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カルメン@新国立劇場 最終日(2007年12月9日) 1階平土間左サイド前方○列での鑑賞
【指 揮】ジャック・デラコート
【演 出】鵜山 仁
【カルメン】マリア・ホセ・モンティエル
【ドン・ホセ】ゾラン・トドロヴィッチ
【エスカミーリョ】アレキサンダー・ヴィノグラードフ
【ミカエラ】大村 博美
【スニガ】斉木 健詞
【モラレス】星野 淳
【ダンカイロ】今尾 滋
【レメンダード】倉石 真
【フラスキータ】平井 香織
【メルセデス】山下 牧子
【合唱指揮】三澤 洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】杉並児童合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
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コメント
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TV放送決定!よかったですね。
ところで、決闘の場面ですが、私の記憶が飛んでいなければ、なんかあっというまにエスカミーリョが転んでしまう短縮版だったようですが、そうでしたか。
ジョゼとエスカミーリョの二重唱
Mettez-vous en garde
et veillez sur vous!
の部分はありましたか?
声を揃えて歌って、最後は、二人で思いっきり伸ばす部分です。
私、ここが好きなんですけど、あったのかしら.....
投稿: keyaki | 2007/12/10 16:31
keyakiさん:
>決闘の場面
はい。keyakiさんのご記憶で間違いありません(笑)
私も初日に「ええ~~っ、たったこれだけぇ?!」って思ったんですよ(^^ゞ
ただでさえエスカミーリョは出番が少ないし、あそこをあれだけカットされちゃうと、ホントに20分あるかないか…の出番になっちゃいますものね。
最初の頃の鑑賞記にちょっと書いてありますが、この決闘の場面のテンポ自体がすごく早かったのも、当初は違和感アリアリでした。
私にとって、耳なじみが一番強いのが、去年夏のベルリンでの放送録音ですが、これはまた極端にテンポが遅い(指揮はバレンボイム)なので、どっちも極端といえば極端なんですけどね。
さすがに、何度も聴いていたら慣れてきましたけど、「僕の仕事は牛を殺すこと」を含めて、やっぱりカットは寂しかったですよ(笑)
投稿: ヴァランシエンヌ | 2007/12/10 17:35
放送決定済みなのですね!エスカミーリョの見せ場は外れないでしょうから、楽しみに待ってます♪主要キャストが役にはまっているようなので、その点でも楽しみです。そしてお姫様抱っこも見逃せませんね(^^)
それにしても、全公演に足を運ぶなんて!私以上ですね~。負けました(笑)今回どうしても仕事が忙しくて上京できませんでしたが、ヴァランシエンヌさんのレポートのお陰で雰囲気を楽しむことが出来ました。ありがとうございました~。
投稿: Sardanapalus | 2007/12/10 20:45
サルダナさん:
>全公演に足を運ぶなんて!
ソレが可能な状況…だったからこそ、ですよね(^^;
たまたま去年帰国して、成り行き上首都圏暮らしをするようになったら、向こうから年に2回も来てくれた…ということ、比較的日程に融通が効くオシゴトについていること、そして、自分自身もそうだけど、この期間中、家族にも何事も起こらなかったお陰ですね。感謝してます(笑)
とは言え、回数重ねただけで、殆どまともなことは書けてませんが、まあそれはここだけではなく、他所様のブログにも詳しく書かれていますから、そちらで補って下さいね(^^;
TV放送、日にちがわかったら改めて告知しますけど、もしサルダナさんも見つけたら、教えて下さいね。お願いします。
投稿: ヴァランシエンヌ | 2007/12/10 22:46
お疲れ様でした~♪
いいなぁ~、6回も観られるなんて!(>_<)
私もそんなことやってみたい・・・。
地方在住者にとっては、東京までの旅費もバカにならないので、こういう時、東京にお住まいの方が羨ましくてたまりません。
さてさて、TV放送があるとか!
や~~っと私も、ヴァラリンさんのダーリンを拝むことが出来るんですね(^_-)-☆
今回の来日で、ブレイクしそうですね。
放送、楽しみにしています!
投稿: 娑羅 | 2007/12/10 23:06
娑羅さん:
いやもう、歌手さんもお疲れでしょうけど、通った私も疲れました(笑)
なーんて、こういう疲れは、幸せ疲れ…なので、何度でも、と言いたいところですが、また来て欲しいです。
>TV放送
嬉しい吃驚のオマケつきですね。
放送は、全国の方に見て頂けるチャンスですものね。
実演では、そこそこ評判がいいようですが、TVだとどんな感じになるのやら。
娑羅さんもご覧になられたら、是非感想を聞かせて下さいね~~(^^)
投稿: ヴァランシエンヌ | 2007/12/10 23:40
>TV
ちなみに、昨シーズンの「ドン・カルロ」は、
2007年1月7日にNHK教育でハイライト放送されています。このあいだ10月にハイビジョンで全編放映でした。
投稿: edc | 2007/12/11 07:34
edcさん:
ありがとうございます!
やっぱり全編放送は、ハイビジョンのみでしょうかね?
BSやハイビジョンは、どこのお宅でも確実に見られるものではないですから(うちなんか、契約はしているものの、マンションの共用アンテナなので、しょっちゅう不具合起こしてストライキするんです^^;)できれば地上波で全部放送して欲しいと思いますけど…
投稿: ヴァランシエンヌ | 2007/12/11 09:24
>こ、こんなシーンで目頭を熱くするなんて…(*vv
わかるっ、その気持ちよくわかりますっ!! ワタシもアレンの時、くっだらねーシーン(しかも大して声が出てないシーン)でウルウルきてましたもん。ワタシは全公演は観られなかったですけど。
ヴァラリンさん、こんな幸せな体験ができて、本当によかったですね!! ワタシもとっても嬉しいです!!
やっぱり千秋楽は違うんですね~。何か思いいれのある公演に行く時には、できるだけ最後の日を狙おうかな。
そして、ヴィノ氏ですが、
>少し上ずってたけど
これは(ウチの界隈では)基本中の基本、褒め言葉です!! フラット歌唱を聴かせられることほど萎えるものはありません。歌唱はシャープ!! シャープですっ!!(すみません、理性が……)
今回の来日でかなり人気が出たと思いますから、これからもちょくちょく来て欲しいですね。ワタシももっと彼の歌を聴いてみたいと思いました。
で、次の楽しみはTV放送。やっぱりワンセグ携帯買おうかなー。
投稿: しま | 2007/12/11 23:46
今回は残念ながらヴィノ氏の雄姿を観ることができませんでした。まあ若い歌手ですし、評判もいいようですからまた機会があるでしょう!!
投稿: オデュッセウス | 2007/12/12 18:40
しまさん:
しまさんも、マゼットとエスカミーリョ、両方のヴィノグラドフを聴いて下さったんですよね(^^) 改めて、お礼申し上げます(⌒-⌒)
> ワタシもアレンの時、くっだらねーシーン
(;^◇^)ノ~
どの辺りなのか気になって仕方がなかったので、しまさんのロンドン旅行記を改めて探し出して読んでしまいました(^^;;;
わかります(笑)
> ヴァラリンさん、こんな幸せな体験ができて、本当によかったですね!!
はい(^^)
あんまり実感が湧いてなかったんですけど、今日通勤途中にiPodでひっさびさに、以前Webラジオで録音したベルリンでのエスカミーリョを聴いたら
「こ、これを生で、6回も聴いたんだわ…(//∇//(//∇//(//∇//)」
と、意味もなくニヤニヤが止まらなくなり、職場でやたらハイテンションで過ごしてしまいました(^^;
でも何度も繰返していますが、、全公演制覇は自分ひとりだけの状況ではなく、家族に何事も起こらなかったことも、大きいですね。
> できるだけ最後の日
そうですね。「これで最後だから、全てを出し尽くそう」という感じで、気持ちの入り方が変わってくるのかもしれませんね。
> ワタシももっと彼の歌を聴いてみたいと思いました。
そう仰って頂けると、本当に嬉しいです。ありがとうございます(^^)v
投稿: ヴァランシエンヌ | 2007/12/12 19:42
オデュッセウスさん:
いえいえ。気にかけて下さっただけでも、本当に嬉しいです。
それに、オデュッセウスさんが行こうとなさっていらっしゃった6日の夜公演の日は、私としては、★3つの日ですから(^^;;;
また機会があれば、そしてできれば「カルメン」ではなく、モーツァルトのオペラかロシアもので聴いて頂きたいです(^^)
とりあえず、TV放送があるみたいですから、また詳細がわかり次第お知らせしますね。
投稿: ヴァランシエンヌ | 2007/12/12 19:46