090910 ヴェルディ・レクイエム ミラノ・スカラ座@NHKホール
3階の一番後ろの、最安値席。なぜこの席になったのかは後述するとして(笑)
見え方ですが、写真では奥まって見えますが、想像以上に良いのです。傾斜が付いてますから、よほど前の人の座高が高くない限りは、全体的に舞台も見渡せますし、双眼鏡を使えば、歌手のお顔もそれなりに見えます。
シカゴリリックの5階席に比べれば、よほどマシだと思いましたもん(笑)
しかし、音響には、不満大ありです。オケと合唱は(バレンボイム先生、オケ鳴らし過ぎよぉ…相変わらず)ばっちり聴こえるんですが、ソリストの声が奥に引っ込んだような感じで、弱声が殆ど聴こえない。特に低音部のピアニシモは殆ど聴こえなくて、かなりフラストレーションが溜まりました。
そんな中で、さすが、と感じたのは、ソプラノのバルバラ・フリットリ。本当に「これぞソプラノの声」という感じの美しい声。それに映像や写真では何度も見たことがありますが、実物の方が断然美しいです。茶色のドレスもよくお似合いでした。
そしてお目当て(一応ね^^;)のバス、ルネ・パーペ。実演で聴くのは2005年の年末・リンデンでの「ボリス」以来ですから、かれこれ4年ぶり。しょっちゅう話題に出ているので(笑)全然そんな気がしませんでしたけど。
今回は過密日程とのことですが、声の調子自体はいいと思います。
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死者の使い、冥土の番人、死の審判者…私がこの作品のバスのパートから受けるイメージです。
見えない誰かによって、暗くて深い闇の中に引きずり込まれそうな、いえ、引きずり込んで欲しい、罪深き私を裁いて欲しいと自らの身を捧げたくなるような声。
このままどこかへ私を連れて行って欲しい、この声には逆らえない…と思う私がこのパートに求めたいのは、
深く暗く、どこまでも深淵で、そのまま暗い闇に引きずり込まれそうな、陰鬱でストイックな響き。
そんな私にとっては、やはりパーペのクリアで乾いた、明るい声は、特に低音部に物足りなさを覚えます。
ヴェルレクの場合は、死者の魂を鎮める鎮魂歌という側面よりも「神の前で最も美しい声を聴かせる為の作品」という説もあるみたいですから、そういう意味ではパーペの、オペラティックではあるけど、歌い崩すことのない、節度を持った表現と、美しい声は最も適しているのかもしれません。
尤もバレンボイムの指揮するスカラ座のオケも、きらきらと眩い音色を出してましたから、このスタイルには合っているんだろうな…と思いましたけど。
それと、これは全体に感じたことですが、一流の指揮者、オケ、合唱、ソリスト…それぞれの水準は極めて高いんですが、何か食い足りない、作品に奉仕する求道者的感覚みたいなものに欠けている気がしました。
1月に聴いた、シンガポール交響楽団の「エレクトラ」のような、世界的知名度では大きな隔たりがあるオケが込めていた、情熱のようなものが希薄だったのかもしれません。
そうは言っても3階席の一番後ろで、音響もいいとは言い難い、最安値の席でしたから、しょーがないっちゃ、しょーがないんですがね
やっぱり私、こじんまりした、音響の良いホールの方が好きです 日本ではとーぜん、新国立劇場でしょ(^^)v
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
2009年9月10日 NHKホール
ミラノ・スカラ座管弦楽団
ダニエル・バレンボイム(指揮)
バルバラ・フリットリ(ソプラノ)
ルチアナ・ディンティーノ(メゾ・ソプラノ)→変更:エカテリーナ・グバノワ
ヨハン・ボータ(テノール)
ルネ・パーベ(バス)
ミラノ・スカラ座合唱団(合唱)
■曲目
ヴェルディ/レクイエム
【おまけ・なぜ最安値席で聴くことになったのか】
基本的に来日公演には手を出さないことにしているんですが(例外もあります^^;)
ここの読者にもファンが多い(笑) 御大ルネ・パーペが2年ぶりに来日してるので、一回ぐらいは行きたいと思っていたのです。
「ドン・カルロ」は大好きな演目だけど、お値段がべらぼうに高いので、合わせて行われるヴェルレクなら、比較的マシな値段設定だろうと踏んで、春頃、友人Nさんに
「ヴェルレクなら付き合ってもいいよ」
と申し出ました。友人のNさんには、過去に新国カルメンで、お付き合いをして頂いた借りもありますし、関西住まいの彼女とは、なかなかお会いする機会も持てませんしね
しかし、ふたを開けて見ると…!
やっぱり、値段が…
なんで、なんで、オペラじゃない、レクイエムなのに
S席(26000円!)は新国のS席よりも高い設定なんですか
(しかもその上には、SS席(28000円!!!)などという、さらにハイクラスのお席が…!)
本当は二人で並んで聴いて、先輩の美しい歌声を聴きながら崩壊するNaoさんを(あ、名前書いちゃった^^;)横目でツンツンしながら鑑賞したかったのですが
「ごめん、あの値段設定じゃあ、C席(10000円)が限界だわ。私もなるべくいい席で…と思ってたけど、自分のダーリンには、なけなしの大枚はたけても(それでも最近はケチって、⇒ あの声は上の方で聴いた方が、よく聴こえるもんですから、あまり高い席にはこだわってないの)いくらお世話になってるNaoさんのダーリン&私のダーリンの尊敬する憧れの先輩とはいえ、私の財力では無理だ
でもNaoさんは、せっかくのダーリン来日なんだから、もっといい席で聴きたいよね?」
と、手のひらを返したような冷たい態度をとるヴァラリン(女の友情というものは、シビアなのです)
そして、チケット発売日。月曜日(なぜに平日?)発売開始10分後に発売元のサイトにアクセスしてみると
既にC,D席は売り切れているじゃないですか(^^;;;
がぁぁぁぁん…
わ、私に大枚をはたけ…ということ? でもC席とB席(19000円)の値段の差は大きいわ。9000円あれば、あのランジェリーが…(は?)とか、いろんなことが頭を駆け巡ります。どうしようーー;
と、もじもじしていると、スポット的にD席(7000円)が一つだけ(!)空いたのです!
んも~~~~~席を選んでいる場合じゃない、これで手を打とうと、買ったお席は3階20列、つまり、一番後ろ。
これはこれで、話のタネになるわね、ただでさえ評判のあまりよろしくないNHKホールの一番上の階の、一番後ろなんて、ある意味すごく貴重かも。
NaoさんはNaoさんで、非常に苦労した末に、無事に良いお席をゲット。
…ということで、会場まではご一緒したのですが、鑑賞は別々のお席でということになったわけでした。
Naoさんをはじめ、会場でお会いした方々、ありがとうございました
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コメント
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ヴェルレク、聴きたかったんですけど残念ながら参戦できなかったgalahadです。 NHKホールも好きじゃないし・・・と負け惜しみをいいつつ、やっぱり聴きたかったとウジウジしてます。
たしかに、御大のお声はクリアすぎます。 (ま、私はクリアな音が好きなのでいいんですけどね) 地の底から響いてくるという低音じゃないので、その点を求めるとロシアンな深いバスのほうがマッチするかな、と思います。 想像するに、バレンボイムの音も荘重というふうではないので、明るいレクイエムだったかしら?
投稿: galahad | 2009/09/13 11:17
友人Nです(笑)当日は開演前から色々ありがとうございました。久しぶりに会えてよかったです
友達に隣でツンツンされながらダーリンの美しい歌声に崩壊する…というのもオツなシチュエーションだったかもしれませんが、実際はね、"Confutatis"の辺りなんか聴かせどころがうまく決まるかとソワソワハラハラしちゃって、崩壊どころではありませんでした
うん、パーぺがヴェルレクを歌うと、調子が良ければ良いほど
> 神の前で最も美しい声を聴かせる
というアプローチになりますね。この日も、私のハラハラは杞憂に終わり、高音部を美しくクリアに響かせていました。
聴く者の魂を深い暗い闇に引きずり込む声とはまったく違うタイプ、自身の熱い感情をすべて吐き出す(でもあくまでもスタイルと気品は損なわず)歌唱がパーぺの身上ですから
最後に、チケット入手はお互いそれぞれの苦労がありましたね
私は平日発売だったものですから、(当時勤めていた)会社のPCからこっそりアクセス、後ろから見られてもバレないようにウィンドウを小さくして(笑)なんとか希望の席をゲットしました。
ダーリンのためとはいえ(笑)お財布事情もあり、2階席真ん中のA席で決めちゃいましたが、オケも合唱もソリストの声もバランスよく聴こえたので、音響的には実はかなり良いエリアだったのではないかと思っています。
投稿: Nao | 2009/09/13 14:16
galahadさん:
そーですよぉ、galahadさんにもぜひお会いしたかったワ(笑)
でもまた、きっと機会がありますよね
>地の底から響いてくるという低音じゃない
そうそう。あのお顔ですから(失礼^^;)
意外とそーいう声を発しそうな感じを受けるんですが、実際には明るいし、彼の声って、年々明るくなってませんか?
>バレンボイムの音も荘重というふうではないので、明るいレクイエムだったかしら?
ぴんぽーん♪ そうなのよ、憂いは皆無…かな。
案外、スカラ座オケとの相性はいいのかもしれませんね。
私は引っ越し後、BSが見られなくなってしまいましたが、28日にはTV放送もありますし、galahadさんの感想、楽しみにしてますね
投稿: ヴァランシエンヌ | 2009/09/13 20:56
友人Nさん、もといNaoさん:
こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。
>友達に隣でツンツンされながら
>崩壊どころではありませんでした
そうそうそう、私も新国カルメンでご一緒して頂いた時は
「お願い、トレアドールきちんと決めてね」
「お願い、机からジャンプする時、ちゃんと着地してね」
「お願い、決闘シーンであんまり情けない転び方しないでね」
と、いちいちお願いごとをしていたので、崩壊どころか生きた心地がしませんでしたもの
>自身の熱い感情をすべて吐き出す(でもあくまでもスタイルと気品は損なわず)歌唱がパーぺの身上ですから
そうですね。自己投影の激しい方だと思います。
>2階席真ん中のA席
結果的には良かったですよね。やはり、あまりケチってはダメですね
しかし、NHKホールにはもう、二度と行きたくないと思いましたです。だって渋谷駅まで遠いんだもんーー;
投稿: ヴァランシエンヌ | 2009/09/13 21:11
ヴァランシエンヌさん、一瞬でしたが、お会いできて嬉しかったです。今度はゆっくりお話出来る状況でお会いしたいです。
この日私は前の方で聴いたので、弱音がばっちり聴こえました。音響重視して今後の座席戦略は最上階狙いでと思っていたので、このレポはたいへん参考になりました。そっかあ、こういうデメリットがあるんですね。小さめの会場で上の方で聴くのが理想ですが(初オペラはそのパターンで、今思えばラッキーでした。全く音響的な不満を感じなかったので。)、なかなか理想通りにはいかないですしね。
投稿: starboard | 2009/09/19 13:06
starboardさん:
こちらこそ。
私はあの時、近くにいたタバコを吸う人の煙(タバコ大嫌いなので)と、あまりの人だかり+弱音が聞こえなかったフラストレーションが溜まっていたお陰で、ものすごく機嫌が悪かったので
愛想が悪くてすみませんでした。
>最上階狙い
双眼鏡を使えばそれなりに見えるとは言っても、さすがにあまりにも遠いと(とくにオペラの場合)何しに来たのかよくわかりませんしね。
どんなに小さい劇場でも、せいぜい3階くらいが私のリミットです。
投稿: ヴァランシエンヌ | 2009/09/21 06:59