091121 ヴォツェック@新国立劇場
旅行記も《バビ・ヤール》鑑賞プロジェクトも中途半端ですが、先にアップしておきます。
一応、過去にアバド指揮の映像と、ベーム指揮のCDを聴いてはいるのですが、部分的に記憶に残っている音楽はあれども、それがどの場面なのかと問われると、答えられない…その程度の予備知識でしたが、こういった演劇的要素が強い作品の場合は、日本語の字幕がついている劇場鑑賞が、一番望ましいのかもしれません。
時代的にも、題材的にも連想するのは、(ちょうどショスタコ&「ロシア音楽とは?」の命題と闘っているさなかですし^^;)
5月に観たショスタコーヴィチの「ムツェンスク郡のマクベス夫人」でした。
どちらも前衛的な音楽&庶民に焦点を当てた作品ですが
《マクベス夫人》は、重い作品の中にも部分的に(例の、カテリーナ&セルゲイの「コトのアトの虚脱感^^;」とか)「ぷぷっ」と笑える場面があるんですが、こちらはひたすらシリアス。
この「ユーモアのあるなし」が、もしかしたら、ドイツオペラとロシアオペラの違い、ひいては国民性の違いかも…とも、感じました。
《ヴォツェック》は、非常に理に走った、というか、理屈っぽい。殆どセリフのような歌で、歌詞も示唆的。重いテーマではあれども、どこか青臭いというか、書生っぽさが残っている作品だと感じました。
《マクベス夫人》のような猥雑さや土臭さ、本能に訴えてくる生々しいイタサは感じられないのです。
音楽に委ねて感情を揺さぶられるというよりも、理性に訴えてくるので、頭で状況を理解しつつ、音楽は後からついてくる…という感覚。(だから、私にとっては、歌詞が日本語で理解出来るかできないかが重要だった)
だけど、ヴォツェックが死んだあとのオケ部分は実に雄弁。こういう作り方も、やっぱりワーグナーや、同時代のR.シュトラウスと同様の、伝統的なドイツオペラだと思います。
登場人物のキャラクターも、思い切り自己投影しつつ、感情移入しちゃう…というわけではなく、やっぱり「作り物の中のキャラクター」として、どこか冷めた部分で眺めている。
マリーも、カテリーナ同様「悲しい女のサガ」を持った女性ではあるんですが、カテリーナに感じたイタさは、感じられない。やはり、ドイツオペラのヒロインだな…と。
演出がとても良かったです。舞台いっぱいに張った水が、時にバチャバチャと水音を立てることもありましたが、美しいシルエットを生み出し、効果的でした。歌手も適材適所、視覚的にもよく合っていたと思います。
音楽的には、やっぱり難しかった。オペラを鑑賞したというよりも、音楽つきの演劇を観てきたという感じです。聴いていて嫌になるタイプの音楽ではないんですけどね。
席は(密かにお気に入りの(^^♪)3階サイドのバルコニー席。夫と一緒の時で、この席は初めてでしたから「今日の席は、アナタもきっと気に入るわよ」と言い含めていた(笑)効果があったのか、とても良い席だと言ってました。
演奏時間は1時間35分という短い時間ですが、軽めの3時間ものの作品を、休憩なしで鑑賞したのと同等、いえ、それ以上の疲労度がありましたが、行って良かったです。
今年の実演鑑賞は、新国も含めてこれが最後。次回は来年3月まで、お預けです。
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ヴォツェック
2009/2010シーズン
2009/2010 Season Opera
[New Production]
Alban Berg:Wozzeck
アルバン・ベルク/全3幕
【ドイツ語上演/字幕付】
スタッフ
【指 揮】ハルトムート・ヘンヒェン
【演 出】アンドレアス・クリーゲンブルク
【美 術】ハラルド・トアー
【衣 裳】アンドレア・シュラート
【照 明】シュテファン・ボリガー
【振 付】ツェンタ・ヘルテル
【企 画】若杉 弘
【芸術監督代行】尾高忠明
【主 催】新国立劇場
キャスト
【ヴォツェック】トーマス・ヨハネス・マイヤー
【鼓手長】エンドリック・ヴォトリッヒ
【アンドレス】高野二郎
【大尉】フォルカー・フォーゲル
【医者】妻屋秀和
【第一の徒弟職人】大澤 建
【第二の徒弟職人】星野 淳
【マリー】ウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネン
【マルグレート】山下牧子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
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こんばんは。
私もついに観てきました。
確かに、1時間35分よりも長く感じましたね。だからといって退屈なのではなくて、それくらい重かったってことかな。
私はぶっつけ本番でしたが、演劇的なオペラであれば、けっこうそれもイケるというか、かえってそっちのほうが面白いなと思い始めました。
古典みたいに「お約束」の知識なんて必要ないので。
それに、トーマス・ヨハネス・マイヤー、かっこよかったっす♪
投稿: しま | 2009/11/24 00:13
しまさん:
>ぶっつけ本番
>古典みたいに「お約束」の知識なんて必要ないので
ですね。とにかく劇場に足を運んで、字幕を見ながら追いかける。
なかなか実演を見る機会が少ないですし、日本語字幕がないと、ちょいと辛いですから、新国でやってくれたのは、ありがたいですね。カメラも入っていたとのことでしたら、放送用の映像収録もしているのでしょうかね?
今回は演出も程よく説明的ですし、そういう意味でも、よい上演だと思います
>トーマス・ヨハネス・マイヤー、かっこよかったっす♪
うんうん 声も良かったですしね。ちゃんと双眼鏡を持って行けば良かったと、ちょっと後悔してたり(^^ゞ
投稿: ヴァランシエンヌ | 2009/11/24 23:52