(オレスト編はこちら)
今回は演奏会形式。オーケストラが舞台の上にデーンと乗っかり(大編成オケですからね、それはそれは、壮観でした
)歌手は、エレクトラ役のジャニス・ベアートのみ、ずっと舞台に出ずっぱりで、後の歌手はそれぞれの出番に応じて、舞台に出てきて、突っ立ったまま…というわけではなく、簡単な演技(身振り手振り)も付けながら歌います。
演奏会形式でのオペラ実演に接したのは、初めての経験です。本来オペラは、総合芸術ですから、装置が何もないのはさびしい気もしますけど、この作品のように心理描写の濃い演劇的な作品ですと、余計な舞台装置や、奇妙な演出をつけられるよりもむしろ、音楽だけのエッセンス+歌手の歌唱表現、役に対する解釈がストレートに味わえて、かえってこの方がいいかも…と思いました。
何よりもオケが雄弁に、情景も心理も、明確に描いてくれているんですから。
ちなみに今回の私の席ですが、通常のオペラ公演で、一回だけしか聴くチャンスがない場合は、可能な限り一階席の前の方を狙うのですが、
・今回はコンサート形式
・エレクトラという、大編成オケ作品だと、一階の前の方よりも、上の方の階の方が、音響のバランスがいいかも
(エスプラネードコンサートホールについては、別記事でまとめました。音響は申し分なく、とても優れたコンサートホールです)
という理由で、一番高いカテゴリーの、2階席一列目のど真ん中(それでも日本円で、5500円ほど!)にしました。おそらく、音響的にはベストポジションだったと思います。
何を持って「いい演奏だった」と感じるのかは人それぞれでしょうし、同じ人間でも、その時々の状況、気分によっても千差万別でしょう。
世界超一流クラスの演奏家が揃い、おのおのの技術を惜しみなく発揮し、それらが拮抗して相乗効果を得るような演奏でも、不思議と全く心に響かないこともあります。ということは、その逆もあり得るのです。
シンガポール交響楽団は、創設30周年だそうですが(ちなみに、首席テューバ奏者は、最近就任した日本人の方だそうです。HPはこちら)その記念コンサートの指揮者として、ケント・ナガノを呼べるぐらいのオケなら、大丈夫かな?とも思う反面、歌手よりもむしろ、オケの方が重要なこの作品で、どの程度のレベルの演奏が聴けるのか、正直不安もありました。
ですが、最初の一音を聴いて「あ、これはもしかしたら…ヴィノグラドフ云々に関わらず、大当たりかも」と直感。指揮者もオケも、そして歌手も、すっごく一生懸命だというのが、伝わってきたのです。
ナガノの指揮も、要所要所を締めて、随所でアクセントをビンビン効かせてくれる、まさに私好みの演奏で、その分私の感動も深まったんでしょうが、あの(おっそろしく難度が高いであろう)スコアを、よく演奏しきった…と思いました。最後の方は、金管がかなり疲れていて、2、3か所音を外したところもありましたが、そういうことは全く気にならなかったし、余計な感傷を抜きにしても、私の実演体験の中でベスト3に入る、非常に心のこもった、いい演奏。音楽の波に身を浸して、気持ち良い感動と、カタルシスを味わえました。
こういうことがあるから、生演奏を聴けるチャンスがある時には、果敢かつ貪欲に足を運ぶべきなんでしょうね。まさか、オペラ辺境の地・シンガポールで、こういう体験ができるとは、予想もしてませんでした。嬉しいびっくりです
7割くらいの入りでしたが、観客の反応も良かったと思います。皆さん、真剣に聴いていらっしゃるのがよくわかりました。一応、舞台の脇には英語の字幕が出ますし、パンフレットにはあらすじも掲載されているので、それを読みながら聴いていらっしゃる方々も。
ちなみに私の隣は、左隣りが白人の若いお兄さん(ヴィノグラドフ@オレストが歌い出した途端、パンフレットを広げて名前を確認してくれてました
ありがとう~~
)で、右隣りが若い女の子二人組(私の双眼鏡
が珍しいのか、チラチラこっちを確認しながら、クスクス笑っているのがちょっと気になりましたが
普通、あんなところに双眼鏡を持ち込んで見る阿呆はいないんでしょうな
)という感じ。
よもや、ここで日本人には会うまい…と思っていたら、席についた途端、後ろの列から日本語が(笑)親子三人連れ・おそらく現地在住の駐在員っぽい感じの方たちでした。
ちなみに、全然気がついてなかったんですが(^^;シンガポールのオペラ情報を提供してくれている、こんなブログもあります。ちゃんと、エレクトラの主要5名歌手についても、いろいろと取り上げてくれていたんですね。
**********************
最近のコメント