100523 やっぱりR.シュトラウス!影のない女@新国立劇場(1回目)
★2回目の感想はこちら→→→
名作が綺羅星のごとく並ぶR.シュトラウスの主要作品の中で、最も手を焼いていたのが、この「影のない女」。
日本での上演は18年ぶりということで(18年前の私はまだオペラ未満でしたけど)作品開眼のきっかけになればと、チケットも2回分購入して(笑)楽しみにしていました。
予習というか、今までに一応なぞった?DVD,CDは
・ショルティ指揮 ザルツブルグのDVD
・サヴァリッシュ指揮 18年前の日本初演@愛知芸術文化センターのこけら落としライブDVD
・シノーポリ指揮 ドレスデンシュターツカペレCD
・ベーム指揮 古いライブ演奏CD2種
・カラヤン指揮 古いライブ演奏CD
…かな。シュトラウスは好きな作曲家ですから、このぐらい見聞きすれば、これまでの経験上、音楽の輪郭ぐらいはたいていの場合つかみ取れる「はず」なんですが、ことこの作品に関しては、どれも「帯に長し、たすきに短し」状態で、どうにもつかめない。
音楽的にも「つかめない」んですが、何となく「赤ちゃん産みましょうキャンペーン」的な香りがプンプン漂う筋書きにも、なんとなく身につまされる(笑)と同時に胡散臭さも感じてて
お友達のgalahadさんが丁寧に書いて下さっている予習ガイド(1~5までの続き物です。プロットが大変わかりやすくまとまっています)
を読んでも、んんー、参考にはなったけど、でもやっぱりわかんない・・;
そんなわけで、楽しみにしていたはずなんですが、だんだん日にちが近づくにつれて、少し食傷気味というか、ブルーになりつつあったんです。
もうこれは、実演で当たれば多分好きになれる、そうじゃなかったら、この作品とは(今は)縁がないんだわ…と思うしかない、と思って半ばヤケクソ(笑)気味に迎えた公演日。
ある意味、作品を徹底的に聞き込まなかったのが幸いしたかもしれません。やはり実演で、字幕を観ながら聴くと格別。
オケの音も色々聞えて圧倒、なんだか涙腺がじわじわ、特に2幕では、涙を流すような場面ではない部分でさえ、わけもなくウルウルしてましたから。
私にとっては、やっぱりR.シュトラウスの音楽は、感性というか、脳に直接訴えてくる音楽だと強く感じました。元々、金管の方に嗜好が向いているのかと思っていたのですが、最近弦楽器の絡まりの方が「泣ける」要素がいっぱい詰まっている気がしてて。
その点に於いて、ショスタコーヴィチに通じる点があるのかもしれません。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
バラクの妻のステファニー・フリーデが圧巻。彼女は昨年の《ムツェンスク郡のマクベス夫人》のカテリーナ役でも熱演、熱唱してましたが、今回はそれを上回る出来だと思います。
強靱で美しい、シュトラウス・ヒロインに要求されるべき高音が、絶叫ではなくきちんと緩急をつけて、無理なく聞えますし、それでいて中低音も豊かに響く。
何よりも体当たり的な演技と歌は、聴き手の心を大いに揺さぶると思います(揺さぶられました^^;)ソプラノは、こういう女性的なたおやかさを感じさせる方がとっても好き 今後も動向をチェックして行きたいと思いました。
皇后のエミリー・マギーは、私は実演で聴くのは初めてですが、10年ほど前のバイロイトでの「マイスタージンガー」エーファや、リンデンの「フィガロの結婚」の伯爵夫人の映像で馴染みがあります。
フリーデほどの体当たり的な歌ではない(いい意味でも、悪い意味でも)お嬢様テニス的なまとまりで、少し物足りないかな?と思う場面もナキニシモ…ですが、さすがにプリマドンナの立ち居振る舞い&歌い回しだと思います。
ソプラノ二人に優れた人材を得ることができたことによって、上演の水準はグンと上がったのではないでしょうか。
また「影」は妊娠&赤ちゃんの象徴なのかと思っていたんですが、必ずしもそれだけではない。答えは一つではないのですね。
この作品が《魔笛》にヒントを得たことは知ってましたが(言い方が適切ではないかもしれませんが)ヒントを得たと言うよりも、《魔笛》をパロっているのかもしれないと感じました。これもまた、確実に答えがひとつ、というわけではないんでしょうが。
皇后の成長物語というか、庇護を受けている乳母、ひいてはカイコバートからの精神的自立への道筋は、《魔笛》のパミーナ(夜の女王&ザラストロからの自立)にそっくりそのまま当てはまりますが、それだけではない。ブリュンヒルデに似た面もあるし、自分以外の人物の愛の形を目の当たりにして、何かを得る点においては、同じシュトラウス・ヒロインの《アラベラ》や《アリアドネ》にも似ているかと感じました。バラクの妻も然り…ですし。
答えが一つではないところ、聴き手に解釈の余地を委ねている点が、やはりシュトラウスとホフマンスタールのセンスの良さかな?と思います。
今回は演出もポップで、理に走りすぎず、気が利いてると思いました。個人的にはこういう、示唆的な演出は好ましく思います。
そして今回は、字幕が非常に感情移入しやすい、わかりやすいもので助かりました。前回の「神々の黄昏」の時は、いやに仰々しく時代劇っぽい感じで、どうにも居心地が悪い感じがしたものですから^^;
やっぱり、2回分チケットを買っておいて良かったと思います。もう少し突っ込んだ感想は、もう一度観てから書きますが、とにかく、今までわからなかったことが少し繋がった、という確かな感触を得ることが出来た上演でした。
なかなか日本では観る機会のない作品です。あと3回上演がありますので、興味のある方は是非是非。
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《影のない女》@新国立劇場 2010年5月23日 2F2列目左サイドにて鑑賞
* 2009/2010シーズン
* 2009/2010 Season Opera
[New Production]
Richard Strauss:Die Frau ohne Schatten
リヒャルト・シュトラウス/全3幕
【ドイツ語上演/字幕付】
《スタッフ》
【指 揮】エーリッヒ・ヴェヒター
【演出・美術・衣裳・照明】ドニ・クリエフ
【企 画】若杉 弘
【芸術監督代行】尾高忠明
【主 催】新国立劇場
(指 揮)
エーリッヒ・ヴェヒター
(演出・美術・衣裳・照明)
ドニ・クリエフ
《キャスト》
【皇帝】ミヒャエル・バーバ
【皇后】エミリー・マギー
【乳母】ジェーン・ヘンシェル
【霊界の使者】平野 和
【宮殿の門衛】平井香織
【鷹の声】大隅智佳子
【バラク】ラルフ・ルーカス
【バラクの妻】ステファニー・フリーデ
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団 (←今回、東フィルじゃないんですね。なかなか良い◎と思います)
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コメント
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ご無沙汰してます。
実は今日、私も新国に行きました。
またもや超超お得なチケットが手に入ったものですから。
1幕が終わってから、「そういえば…ヴァラリンさんも」と思い出して、ホワイエでちょっとキョロキョロしてたんですけど、わからなかったです。
投稿: しま | 2010/05/24 00:10
しまさん:
ええっ、今日いらしてたんですかっ。連絡下されば、すっとんで行ったのに(笑)
(何しろ、前回の「黄昏」の時と同じ格好してましたから^^;)
1幕終了後は、ホワイエには降りなかったんですよーー;2Fでぼーっとしてました。
」をむさぼっていたもんですから、これまた人様にお見せできるような形相ではなかったかも^^;)
(2幕終了後は「スイーツ
投稿: ヴァランシエンヌ | 2010/05/24 00:17
拙宅予習ガイドへのリンク、ありがとうございます。
(ドアのとこから覗いてるとことか)
演奏はかなりステキで、時間がすぐ経ってしまいました。
フリーデさんは、そうか「ムツェンスク郡のマクベス夫人」で歌ってらした方なんですね。 最後まで圧倒的パワーで、力強い高音にはほんとにびっくりしました。
女声陣はとても素晴らしかったですよね。 あと、バラクの弟たちの動きがかわいかったです。
投稿: galahad | 2010/05/24 21:14
galahadさん:
いい演奏の時って不思議と時間を感じないものですが、昨日はまさに、そーいう感じでした。
もう一度行く日も、そうあって欲しいです
投稿: ヴァランシエンヌ | 2010/05/24 23:37
初めて訪問させていただきます。
記事を興味深く読ませていただきました。作品を深く理解されているのに感服いたしました。いろいろ勉強になりました。私も新国立劇場でR.シュトラウスの「影のない女」を鑑賞してきました。私も初めての作品でしたが、音楽の構成力も含めて魅力ある作品に感じました。
私の感想などをブログに書きましたので是非読んでみてください。
http://desireart.exblog.jp/10678873/
よろしかったらブログの中に書き込みして下さい。
何でも気軽に書き込んでください。
投稿: dezire | 2010/06/02 15:47
dezireさん:
はじめまして。コメントありがとうございます。
二回観たら少し感じ方が変わった…というか、やはりこの作品の魅力は、今の私にはわかりにくい…ということが、はっきりしたんですが^^;
その辺をもう少し洗い出して、二回目の感想も書きますね。
投稿: ヴァランシエンヌ | 2010/06/03 00:25