101228 魔笛×2 @ベルリン国立歌劇場(シラー劇場) 全体編
(ザラストロ編はこちら)
12月28日の魔笛は、昼と夜の2公演。昼公演はFAMILIENVORSTELLUNGENと言って、16歳以下の子供は一律10ユーロで観られるという企画。たくさんの(着飾った子もいれば、スキーウェアみたいな、プクプクに着ぶくれした^^;)かわゆい子供たちと一緒の観劇となりました。
…うんうん「ファミリー魔笛」(←勝手に命名)だから、きっと短縮版なのよ。
と、勝手に決めつけていたのですが、実際に始まってみると
「え?も、もしかして…
これもフルバージョンなの?∑(゚∇゚|||)!」
ということに、開演後、ほどなくして気がつきました。。。
主要キャストは、タミーノ、パミーナ、パパゲーノと3人の童子以外は昼夜かけもち、指揮者も一緒で、本当に皆さん、お疲れ様…素敵な公演をありがとう…と思いました。
結論から言うと、夜の公演の方がよりよくまとまって、隙のない演奏でしたが、昼の公演も決して「子供が多いから」ということで、手を抜いているな…と感じる場面は全くありませんでしたし、過度に子供に媚びたようなパフォーマンスが多くなるわけでもありませんでした。
もし、昼公演だけ聴いていても、充分満足できたと思います。
(実際、カーテンコールの盛り上がり方は、昼公演の方がより凄かった^^; 客層の違いもあるかと思いましたが、非常に楽しかったです^^)
さてこの「魔笛」アウグスト・エファーディングの演出です。彼の演出した「魔笛」で有名なのは、DVDにもなっているミュンヘンの舞台だと思いますが、
こちらは19世紀にベルリンで活躍した建築家のカール・フリードリッヒ・シンケル(コンツェルトハウス等の設計をした方ですね)が1816年、ベルリン宮廷劇場にて上演された際に考案した12枚の絵を元に、エファーディングが演出したとのことです。
ミュンヘンの舞台に負けず劣らず、ディテールまで細かく練り上げられた、とても美しく、且つ楽しい舞台です。
1997年のベルリン国立歌劇場来日公演時にはTV放送もされましたから、こちらをご覧になったことがある方も多いかもしれませんね。
基本的に「オペラの演出は、何でもアリ」と、比較的許容範囲が広めの私ですが、こと「魔笛」に関しては、オーソドックスが一番収まりがいいような気がします。
もともとが教義的で、胡散臭げな(笑)雰囲気があるのを逆手に、最近はあれやこれやといじくり回した演出も増えていますが、ファンタジーの側面を残しておいた方が、素直に音楽と向き合えるような気がします。
「魔笛」に関しては、重い面はあえて「物語の上だから^^;」とふたをかぶせてしまった方が、良いと思うのです。
でないと、「パミーナの絶望場面」や「パパゲーノの自殺しちゃうかも~~場面」が、あまりにもリアルで、辛くなってしまいそうですから
《この辺り、5年ほど前にまとめた連載があります。興味のある方はどうぞ》
☆《魔笛》 台詞のなぞなぞ その1
☆《魔笛》 台詞のなぞなぞ その2
☆《魔笛》 演出の難しさ
☆《魔笛》 本当に入門用のオペラかな?!
☆気になるオペラの登場人物 ザラストロ
☆映像リスト
☆CDリスト
ということで、まずはこの作品の重要な要・パパゲーノについて。
昼公演はKlaus Hager。一瞬「あれ?昼もブラッハマンだっけ?!」と思ってしまうくらい、遠目には似てたんですけど(^^; よく聴いてみると、彼よりもちょっと声が高め。。。で、演技も若干大人しめ。
だけど、アドリブを交えたり、派手ではないけど堅実な歌唱は、モーツァルトのオペラにとっては、重要な要素ですから、これはこれでいいんじゃないかと思いました。
そして夜公演は、お楽しみのハンノ・ミュラー=ブラッハマン(Hanno Muller-Brachmann)
彼のパパゲーノは、絶対に一度、実演で聴いておきたかったので、今回ホントに嬉しかった。
声的にも見た目や雰囲気のイメージ的にもぴったり。ミュンヘンのDVDの、ヴォルフガング・ブレンデルと同じぐらいのインパクトがあると思います。
彼の美質は、明るい声質なんだけど、実は歌はけっこうストイックで、歌い崩すとかいう、変則ワザ(笑)を使わないのに、ちゃんとユーモアたっぷり、愛すべき「隣のお兄ちゃん」的親しみやすいキャラクターに仕上がっているところ…だと思うのです。
(先にレポした)「コジ・ファン・トゥッテ」のグリエルモの時にも思いましたが、もう少し若かったころには、真面目すぎて窮屈さが感じられましたが、いい意味で力が抜けてきてますし、今、かなり良い時期に差し掛かっていると思います。
40歳過ぎて、いい男度もどんどん増してきてますし機会があったら是非、実演で聴いて頂きたい歌手の一人です。
タミーノとパミーナは、昼公演はリンデンのアンサンブルメンバーでお馴染みの歌手たち、夜公演はゲストでしたが、特筆は夜公演のタミーノ・Daniel Behle。
歌にインテリジェンスがあって、見た目も◎、もちろん声も美しいしビックリ(@。@; の歌唱
タミーノは、モーツァルトのテノールの中ではあまり面白みのない役どころですが(^^; こういう良いテノールで聴くと、なんだか退屈なのよねぇーー;な、彼のアリアも、輝いて聴こえるから不思議なものです。
パミーナは、昼のAdriane Queiroz(彼女は「コジ」のデスピーナの時は別人のように、生き生きしていた^^;)は(見た目はともかく^^;)役作りはおとなしめでしたが、
夜のLydia Teuscher は、積極的現代っ子パミーナという感じ。
タミーノに初めて出会った時も、嬉しさのあまり抱きついちゃうし(笑)
夜の女王から「ザラストロを殺せ」と言われて、モノスタトスから迫られたあとに、ザラストロが登場して、二人で歌うところ…
この場面、この演出ではせり出し舞台の上をゆっくり二人で歩きながら歌うんですけど、ザラストロが立ち止まって、パミーナに滔々と説教を ⇒ 歌いかけるところで、
優しく慈父のような眼差しで見つめるザラストロの胸に、そっと顔をうずめるパミーナ。。。
…ドキl∑(*。*;ノ)ノ
や、やるわね、このパミーナ。 。。
そうそう、忘れちゃいけない弁者のアルットゥ・カターヤ(Arttu Kataja)
昼も夜も、神殿に入る時に頭を打ちそうになっていて、ヒヤヒヤしましたが(背が高いからね~~)クリスタル系バス・バリトンボイスは、この役によ~~~~く、合ってましたよ
オケはもう、言うことありません。手慣れた作品でしょうし、小気味良いテンポが非常に心地良く、2回も見ちゃった!んですが、嬉しい高揚感でいっぱいでしたから、楽しかったです。
「上質のモーツァルトを聴きたければ、リンデンへ行くべし」です(笑)
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
えー、誰か一人、主要キャストのことを忘れてませんか?ということで。
実はこの演出を観たのは、今回が初めてではありません。
私が(奇しくも同じ日にち)2004年12月28日(現在改修中の)ベルリン国立歌劇場で、初めてアレクサンダー・ヴィノグラードフ(Alexander Vinogradov)に出会った、思い出のプロダクション。日にちまで同じという、まさに「メモリアル公演」でした。
⇒⇒⇒ Playback to 6 years ago...
and to be continue the newest memory about his Sarastro
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
2010.12.28 15:00 Uhr / 19:00 Uhr @ Staatsoper im Schiller Theater, Berlin
Die Zauberflote
Oper von Wolfgang Amadeus Mozart
Musikalische Leitung Julien Salemkour
Inszenierung August Everding
Buhnenbild nach Schinkel Fred Berndt
Kostume Dorothee Uhrmacher
Chore Eberhard Friedrich
Sarastro : Alexander Vinogradov
Tamino : Stephan Rugamer / Daniel Behle
Sprecher : Arttu Kataja
1. Priester : Christian Schleicher
2. Priester : Bernd Zettisch
Konigin der Nacht : Ana Durlovski
Pamina : Adriane Queiroz / Lydia Teuscher
1. Dame : Evelin Novak
2. Dame : Katharina Kammerloher
3. Dame : Constance Heller
Papageno : Klaus Hager / Hanno Muller-Brachmann
Papagena : Rinnat Moriah
Monostatos : Abdellah Lasri
1. Geharnischter : Paul O’Neill
2. Geharnischter : Rosen Krastev
Drei Knaben Aurelius Sangerknaben, Calw
Staatskapelle Berlin
Staatsopernchor
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「全体編」ということは「ザラストロ編」があるということですね
私がリンデンに行くと、なにかっつーとフィシェッサーさんが出ててザラストロも彼だったなあ…。 カターヤくんの頭うちそうな弁者も見たいのに(確認したらこれもバウアーでした)! このプロダクションは古いけど、「魔笛」をきれいに視覚化していてほんとに良いですよね。
>「パパゲーノの自殺しちゃうかも~~場面」
すご~く前のことなんですが、ある公演を観に行った時この場面で、小ちゃい子がほんとに「パパゲーノ!死なないで!」って叫んだことがあったんですよ(童子たちが止める前です)。 いまだにこの場面になると、声がかかるんじゃないかとドキドキします。 その時のパパゲーノは「ありがと」って風なジェスチャーをしてなにげなく続けましたけどね、ハンノさんだったらどうするかな~とか考えちゃいます。
投稿: galahad | 2011/01/30 21:50
galahadさん:
>ザラストロ編
はあ、なんか…
余計なことを考え過ぎなのかもしれませんが、まとまらないし、他の部分だけでも先に抽出しないと、いつまで経っても終わらないし…と思いまして。
やりたいことは色々あるし、いつまでも引っ張っているのは精神衛生上良くないですから、数日中にアップしますよ。
>フィシェッサーさん
彼は、シラーに移ってからは殆ど出演しないみたいですね。私は6年前の「魔笛」の時の弁者と、ヴィノさんに振られた「ボエーム」のコッリーネが彼でした。
>「魔笛」をきれいに視覚化
ホントにそうですね。6年経ってもう一度見てみても、やはり良く出来た演出だと思いました。これは、なかなかやめられないでしょう。なんだかんだで、年末はお客さんの入りも良かったみたいですし。
「魔笛」も「魔笛」というだけで売れますからね…
>「パパゲーノの自殺しちゃうかも~~場面」
子供は真剣に見てますからね~~
そうですね、パパゲーノ役の歌手は、もしかしたら常にそういう可能性を折り込んで歌い演技しているかもしれませんね。
投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/01/30 22:13
懐かしい^^。
私が観たのはもう1年半前のことになってしまいました。
キャストが同じなのは主要登場人物ではQueirozとカターヤくんぐらいですけど、カターヤくんの弁者は本当に背が高く凛として素敵ですよねー。
>上質のモーツァルトを聴きたければ、リンデンへ行くべし
なるほど、モーツァルトもですか・・・
私がずっと思っているのは
>上質のワグナーを聴きたければ、リンデンへ行くべし
です。
ではヴィノさんザラストロ編も楽しみにしてます。
投稿: kametaro07 | 2011/01/31 13:30
kametaroさん:
がご覧になった時のレポを探し出して、改めて読ませて頂きました。
そうそう、そういえば一日だけパーペがザラストロで、その後2回、ヴィノさんが歌った時でしたね。トレーケルがパパゲーノでしたか
(私は6年前の初見の時が彼のパパゲーノでした)
こうして振り返ってみると、どこかしらで皆さん、キャストが被っていますね(^^;
>上質のワグナーを聴きたければ、リンデンへ行くべし
と言われて、ハテ?と振り返ってみたら
そういえば私、リンデンでワーグナーを聴いたのことがあるのは、2006年1月の「オランダ人」だけなんですよ(^^;
牛太郎氏がオランダ人、ヴィノさんがダーラント(!)スーザン・アンソニーがゼンタでしたが、この時の演奏も、非常に良かったです。
リンデンでモーツァルト…のイメージが強いのは、6年前と今回の「魔笛」&「コジ」が非常に良かったから、よりその思いを強くしたことはもちろんですが、DVD2種(「コジ」と「フィガロ(パーペとレシュマンが出演しているもの)」と、来日公演の時のDGも良かったことに起因しているかもしれません。
個人の好みにも左右されますが、実演その他に当たる回数によっても、何をオススメするかが変わってきますね(笑)
あとは指揮者にも拠りますかね。最初に当たった「ドン・カルロ」の時のルイージは別格
で、その他も大抵、どなたが振っても
でしたが、
と足取り重めに帰ったこともあります(笑)
2回同じ指揮者で、う~~~~~~…ん
残念ながら、その方と私とは、相性が悪いようですーー;
(バレンボイム先生ではないです、念のため^^;)
投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/01/31 14:03