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110422 ばらの騎士@新国立劇場

最終日に行って参りました。
大震災のあとの自粛ムードの影響で、ロビーもなんとなく薄暗かったです。ご一緒したstraycatさんとは「ウェルカムフラワーの前で待ち合わせですネ」と申し合わせていたのに、行ってみたら、ない!!ああびっくり…shock

今回の席は、3階席の右端のほう。C席ですが、見切れるところも殆どありませんでしたし、同じC席ならば、4階よりもこちらの方がコストパフォーマンスが良いと思いました。(4階まで行くと、音が抜けてしまう感じがするので)

日本人キャストでは、ゾフィーの安井さんが、演技は少しカタイかな?と思いますが、声量も充分、娘らしい声で良かったと思います。オクタヴィアンの井坂さんは、声量が少し足りない時がありましたが、マリアンデルに化けている(笑)時は、ハジケテいて、良かったです。

元帥夫人とオックス男爵、そして指揮者。この3人が外国人だったことは、上演の質の向上に、良い影響を与えたと思います。その点に於いて、このような時期に来て下さったことには、本当に感謝です。

オックス男爵のフランツ・ハヴラタは、5年前にシカゴでこの役を聴いたことがあって、その時の印象が、実はあまり良くありませんでした。まあ、あの時は大きな劇場の5階席での鑑賞でしたから「聴いた」だけ状態みたいな側面はあるのですが。

ともあれ、今回は初日から大活躍なさっていたということですが、歌は、フレージングの処理がちょっと雑に感じ、荒れ気味な感じも受けました。最終日ということもあって、声に疲れがあったのかもしれません。

が、演技は多少、大げさかな?と思う面もなきにしも…でしたが、ツボは外さない。ここぞ、という時の舞台さばきが実にこなれていて、粗野な面とお茶目な面がミックスされた、良いオックスだったと思います。
舞台を盛り上げよう!という意志が、よく伝わってきました。
ああいう味わいは、なかなか日本人には難しいかもしれません。

元帥夫人のアンナ=カタリーナ・ベーンケ。こちらは本当に素晴らしかった。実は私が今まで実演で観た元帥夫人は

2007年新国での、ナイーブで我が儘なお嬢さんがそのまま嫁いできたような、カミラ・ニュルント

2009年ベルリンでの、知的でほのかに色っぽく、でもまだ「枯れてないのよ」なリアルなイタさが、私の心をわしづかみにした(笑)アンゲラ・デノーケ

・そして実演ではないけれど、昨年メトのライブビューイングで観た、アメリカンレディそのものの、すっごくわかりやすくて、そこに親しみと共感を覚えた、ルネ・フレミング

…と、比較的「若さをまだ残した役作り」な元帥夫人で、
どちらかというと「元帥夫人」というよりも「マルシャリン」という呼び名がぴったりなタイプの方ばかりだったんですが、
…人生の下り坂を、ゆっくりと歩み始めた自分の心の揺れを、しっかりと自覚している…人間としても、成熟した大人の元帥夫人を観た、聴いた…!と思いました。

前に、ベルリンで観た時の感想に、私のイメージする元帥夫人=マルシャリンについて書いたことがあるので、それを引用します。書き直そうかと思ったけど、これ以上うまく書けそうにないので^^;

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

オペラに出てくるヒロインの中で「最も美しく、誇り高く、知的で魅力のある女性は?」とアンケートを取るとしたら、「ばらの騎士」の元帥夫人こと、マルシャリンはおそらく、トップ3に入ってくるのではないでしょうか。

それなりに酸いも甘いも噛み分けた、分別のある大人の女性。若い恋人が可愛くって仕方がないけど、時は移ろいやすく、迫りくる老いへの不安を憂えつつも、彼に新しい恋人が出来てしまったら、さらりと身を引いて若い二人を祝福…絵に書いたような、理想的な女性像。

…一般的には、こういう感じで捉えられているかと思います。

私はマルシャリンって、非常に内向的な女性だと思うのです。結構わがままで、ナイーブ、さびしがり屋で、ウジウジ考えちゃうタイプ。
「もう、みんな出て行って!一人にしてよ!」と皆を追い出してから始まる一幕のモノローグでは、最初は不躾なオックス男爵に対する怒りから始まって、だんだん「私も若いころは、可愛かったのよね…でも今じゃこんなに老けちゃって、みんなが笑うわ」と、勝手に我が身を卑下して、ネガティブスパイラル。

再びオクタヴィアンがやって来ても「もう一人にして…」と勝手にスネスネ、でも追い返した傍から「キスもしないで帰してしまうなんて」と、またウジウジ。

3幕では、オックス男爵に対しては、虚勢を張り気味に「物事には全て、終りがあるのよ」と言いながらも、
ゾフィーと自分に挟まれて、どっちつかず、やべ…僕どうしよう…とうろたえるオクタヴィアンには、はっきり言えないのに、
(自分とニタモノであることを、瞬時に感じ取ったであろう^^;)イタイケで、モジモジガール(笑)のゾフィーには
「彼が好き…って、顔に書いてあるわよ」って、ちくっと嫌味(笑)も言ってみたり。

「わけしり顔の、貫録、余裕たっぷり」な熟女的マルシャリン(というよりも、まさに「元帥夫人」という呼び名がぴったりな感じ)は、それはそれで、魅力があり、そういうマルシャリンは確かに一つの理想形と思うんですが、

私は個人的に「まだ枯れてないのよ、私…女盛り真っ盛り…なんだけど、でも仕方ないわ…」的な、彼女の女性としての、弱くてウジウジしたイタさと、理性と本能の間で揺れ動く葛藤が、リアルに伝わってくるマルシャリンが好き。
アンゲラ・デノーケのマルシャリンは、まさにその、私のツボにぴったりハマっていて、心を揺さぶられました。聴けて(観れて)本当に良かった。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

こういう私の「理想のマルシャリン」とは、趣の異なるベーンケでしたが、そーいう「熟女的元帥夫人」も、やはり良いんですよ。気品もあるし、まさに上流階級のご婦人という容姿(体型的にもベスト)も相まって、大変素晴らしかったです。この人で聴けて良かった、本当にそう思いました。

そして、今回のオケの新日フィル、Goodgoodでした。新国ではオケに不満を感じることもままあるのですが、今回は好印象。弦楽器の絡みが、なかなかにエロティックで、ふくよかでした。
指揮も手堅く適切、過度にツヤつけるようなことをしなくても、充分に楽しめるものだ…と思いました。

それにしても、やはり「ばらの騎士」はオペラの中のオペラ。なんと粋でゴージャスな上質のエンターテイメントなのでしょう。

笑いあり、涙あり、哲学的な示唆もあり、ばかばかしさもあり、高尚な部分もナキニシモ…だけど、やっぱり俗っぽい。そして最後はさらっとハッピーエンド…だ・け・ど、それだけで片付けられる?どう?!
ウーン、でもとりあえず「ゴージャス!」でいいんじゃない?

…みたいなcoldsweats01
世紀末ウィーンの退廃という虚構の世界での出来事の中に、人間の営み全ての要素がちりばめられている気がします。

そう、作品に惚れているという感じかもしれません。一つだけ好きなオペラを選びなさい…と言われたら、迷いに迷った挙げ句、やっぱり「ばら」を選ぶかもしれない、上質の上演、素晴らしいソフトに当たった時には、本当にそう思います。
(ロシアオペラには、こーいう「粋」はないもんねっbleah

《おまけ》
そんな「粋でゴージャス、上質のエンターテイメント」の極み、カルロス・クライバーのウィーンでの公演(DVDにもなっているもの)

2幕・「銀のばら」贈呈シーン

3幕・「カンドーの3重唱」(クライバーの指揮つき^^!)

♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:

ばらの騎士@新国立劇場

【指 揮】マンフレッド・マイヤーホーファー
【演 出】ジョナサン・ミラー
【美術・衣裳】イザベラ・バイウォーター
【照 明】磯野 睦

【元帥夫人】アンナ=カタリーナ・ベーンケ
【オックス男爵】フランツ・ハヴラタ
【オクタヴィアン】井坂 惠
【ファーニナル】小林由樹 
【ゾフィー】安井陽子
【マリアンネ】黒澤明子
【ヴァルツァッキ】高橋 淳
【アンニーナ】加納悦子
【警部】長谷川 顯
【元帥夫人の執事】小貫岩夫
【ファーニナルの執事】経種廉彦
【公証人】晴 雅彦
【料理屋の主人】加茂下 稔
【テノール歌手】水口 聡
【帽子屋】國光ともこ
【動物商】土崎 譲

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】新日本フィルハーモニー交響楽団

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コメント

う~ん・・・ラブが溢れていて良いですね。(笑)

>粋でゴージャスな上質のエンターテイメント

ちょっと大袈裟で・・・ちょっとはしたなくて・・・でも・・・とても正直でとてつもなく美しい・・・。

厚化粧と思いながら・・・序曲が始まると何となくウキウキしてしまう自分・・・やはり好きですね!(笑)

オペラも色々聞いてきましたが、何の気負いもなく心から素直に聴けるのはR・シュトラウスの「アリアドネ」と「薔薇」が双璧です。

ああ~久しぶりに生で聴きたい~~!!(汗)

投稿: ユキタロウ | 2011/04/25 21:30

こんばんは。良かったですね。
デノケは聴きたい人なんですよね。
私のベスト・マルシャリンは今のところピエツォンカかな・・・。
>3階席の右端のほう
4階より良いのだろうといつも思ってますが、常に出遅れるので残ってません。
それで4階かB席にするかいつも迷ってます。
4階でも3,4列目はかつてD席だったと思うと悔しい気がするので、B席にしたり・・・。
まだコジもゲットしてませんが、3階のC席は行けない日しか残ってないし・・・。

投稿: kametaro07 | 2011/04/25 21:47

ユキタロウさん:

わっ、お久しぶりです(*^o^*)コメント嬉しいです~

>何の気負いもなく心から素直に聴けるのはR・シュトラウスの「アリアドネ」と「薔薇」が双璧です

ああ…なんか、わかる気がします。
好きな演目でも、つい口さがなく(笑)「あれが気に入らん、ここが気になるっ」とか言いたくなるものもあるんですが、そうならないことが多いのは、私にとっては「ばら」と「マイスタージンガ-」かもしれません。
(そこへ行くと、ロシアものに関しては、実は許容範囲が狭いかもしれません^^;)

>生で聴きたい~~!!

私も震災以来、初めての生鑑賞で、感度がどうなっているのかの試金石みたいなものだなぁ、などと考えていたんですが、観ている(聴いている)時は、そのようなことは全く頭をよぎりませんでした。
俗な言い方ですが、やはり、人間の生のエネルギーには、癒しや心をほぐす効果があるのかもしれませんconfident

投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/04/25 23:10

kametaroさん:

デノケ、映像で観ていた時よりも、生だと印象がぐっと違いました。中音域が豊かな人なので、クンドリーとか、いいのでは?と思っているんですが、機会があればもう一度、彼女のマルシャリンは聴きたいです。

>ピエツォンカ

なにかの映像で観た記憶があるんですが、思い出せません(^^; 色々聴いてみたい方はいるのですが、なかなか・・;

そうそう、3階の隅っこは割り当てが少ないですものね。BとCの値段差がけっこう大きいので、うまく狙えればお買い得だと思いますが、難しいですよね。。。
(ぼんやりしていると、出遅れてしまいますしーー;)

投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/04/25 23:27

ヴァランシエンヌさん ご挨拶が遅くなって申し訳ありません。
なにせ今、取り込み中なもので・・(^^;
「ばら」よかったですよね~
ご一緒できて、楽しさも倍増でした。
私、初ライブだったんですが、ベ-ンケさんで元帥夫人が見れて本当に良かったと思っています。
淡々とした中にもキッパリした意思のある元帥夫人で、日本が今こういう時期であるだけに、安っぽいお涙ちょうだい演技だけは見たくないと思っていましたので、そういう意味でも大満足でした。
クライバーの映像も探してくださったんですね。
いやぁ、指揮そものが雄弁に彼の音楽を表していますね。
エレガントだわ
銀のばらの献呈は、やっぱり白い鬘でなくっちゃね
ロココ、ラブ~happy02

投稿: straycat | 2011/04/26 14:58

straycatさん:

こちらこそ、お忙しい中ご一緒して頂いて、ありがとうございました!!私もとっても、楽しかったですhappy01

>安っぽいお涙ちょうだい演技だけは見たくない

同感です。プロフェッショナルなパフォーマンスでしたものね。

>クライバーの

何気に宝塚ちっく(というか「ばら」が本流だけど)な雰囲気で、良いでしょーhappy02

「コジ」も、またご一緒に楽しく鑑賞出来ることを祈ってますwink

投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/04/26 19:21

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