イル・トロヴァトーレ@Metライブビューイング
いやー、男性陣二人に酔いしれました
特にマルセロ・アルバレスのマンリーコ。私、今回の映像を見て、やっと
「マンリーコって、武人じゃなくって詩人なのよねぇ」
と認識できました。チャンバラ場面のインパクトがどうしても強い+ロブストのテノールで歌われることが多い(し、好まれる)ので、何となく武人のイメージで固まっていたんですけど。
3幕の、レオノーラに歌う「ああ、愛しい人よ」が、あんなに優しく、美しい、詩的なアリアだということが、初めてわかりました。
「君よりも、ちょっと早く天国に行くだけ…僕は死を、そんな風に考えている」
って。。。
アルバレスの美しい弱音と、コントロールのよく効いた端正な歌い口に、涙腺がじわじわ。
「ゲッ、トロヴァトーレで泣けるなんて、どういうことよ)
と思いつつ。。。
レオノーラに対しても、アズチェーナに対しても、優しくもあり、我が儘でもあり、一本気ちっくなところもあり。
恋人を取るかと思えば「君の恋人である前に、あの人の息子だ」とかねぇ。全く男ってヤツは
って思いつつ、いちいち納得できてしまうというか。
レオノーラが毒を煽って、死ぬ直前のなんというのか…怒りと嫉妬、それに相反する優しさ、気遣い。そんなものがいちいち心に迫ってきて、最後もウルウルしっぱなし
マンリーコって、そうよ。オテロやカラフじゃないんだから、ちょっと「折れそうな」脆弱さが感じられる方が好き。意外にも、アルバレスはその私のツボを思い切り突いてきて、ホント、嬉しいビックリでした。ええ、実はマルセロさま、きちんと意識して聞いたのは、初めてだったのですけど
(そして私はセラフィン盤のカルロ・ベルゴンツィ様のマンリーコを愛でてます)
やーだもう。こんなはずではなかったはずなのに、このオペラ(笑)
マルセロ様に、してやられました そしてこれからも、もっとマルちゃんを聞いてみたい!!と思いました。
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そして恋敵のルーナ伯爵・ディミトリー・ホロストフスキー。
こちらはもう、堂に入った演技歌唱に圧倒されましたわ。思わずホロストフスキー氏の大ファンでいらっしゃる、娑羅さんに終演後、すぐに連絡しちゃったぐらいでしたからf(^^;
(実は娑羅さんが、あまりのすごさに映画館で倒れているのではなかろうかと心配になっちゃったっ…ってのもあるのヨ!)
ルーナ伯爵は、まあホントにエゴイスティック+ナルシスティックで自信過剰、自分でも
「私は、自分の権力を乱用しているかもしれないが、全てあの女(人)がいけないのだ」
とか。(スカルピアみたい^^;)
全く悪びれた様子もなく、ふてぶてしさいっぱい…なんだけど、絶対に必要不可欠なエレガンス。
アズチェーナにまで「お前は父親よりも残忍だ」と罵倒されるほどの彼ですが、自らの欲望が引き起こした結末でありながら、愛する人を失い、弟を殺めてなお、
「それでも私は生き続けなければならないのか」と、最後の最後に良心の呵責に苛まれる。その表情付けも絶妙で、胸に迫りました。
昔の、ホセ・クーラとの映像もなかなか良かったですが、あの頃よりもシャープで引き締まった感じがしますし、動きはぴたっと、歌舞伎役者のように決まるし、歌の方も、絶好調だったんではないでしょうか?
私は、彼のレパートリーの中ではこの役が一番、いろいろな意味で合っているんじゃないかな?と思います。(オネーギンもステキですけどね)
来日公演のロドリーゴも、ステキでしょうね
このような時期に来て下さり、また、頼もしいインタビューもありましたし、ファンの方は嬉しいでしょうね。しっかり、楽しんで下さいね!!
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レオノーラは、もっと小股が切れ上がったような「いい女風きりっと感」が、歌にも佇まいにも欲しい。ソンドラ姉さん、なんとなく大味に感じられて、残念ながら私にはちょっと…
「何故そこで、そんな風に笑うのよ?^^;」とか。小気味よいアンサンブルに彼女だけ、ついて来れてない部分が多々感じられたり。
ドラマのキーパーソン・アズチェーナのザジック。とてもとても、評判の高いメトの旧映像(でも私には、その良さが全くわからない^^;)よりも、うんと良かった。やっぱり、長年歌い込んでいるだけのことはあるなぁと思いました。
彼女がドラマを動かしているようでありながら、実は彼女も「母親」に支配され続けている、弱い女性。結局、この作品の真の勝利者は、アズチェーナの母親でしょう。
むちゃくちゃな筋立てだと思いつつも、久しぶりに日本語の字幕付きで、どっぷりと作品と向き合うと、色々考えさせられました。実はアズチェーナの「子供をさらってきたが、泣き疲れているのを見たら、かわいそうになって…」のくだりも、ウルウルしてましたから。なかなか、含蓄深い台詞を、アズチェーナは歌っている(任されている)んだなぁと思いました。
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それから、脇の歌手では、レオノーラの侍女イネスのソプラノさんが、とても澄んだかわいらしい声で、聞き惚れました
もう一人、歌の方はまあともかく(悪いわけじゃないんだけど、声に密度が足りないかなぁ?)見た目はディカプリオのような、ステファン・コツァーンのフェランド。いい男のせい?やけにフェランドが写る場面が多くて
「この役って、こんなにたくさん歌うところがあったのね(^_^;)」
と思いました。そういう意味では貢献度◎かも(^^;
まあ、そんな感じで、少し目(耳)をつぶりたい(塞ぎたい)ところもナキニシモ…でしたが、
とにかく主役男性陣二人には「ケチのつけようがない」と、夫も絶賛。気持ちよく、帰路につくことが出来て、ハッピーな鑑賞でした。
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Marcelo A'lvarez (Manrico) マンリーコ:マルセロ・アルバレス
Sondra Radvanovsky (Leonora) ソンドラ・ラドヴァノフスキー
Dolora Zajick (Azucena) アズチェーナ:ドローラ・ザジック
Dmitri Hvorostovsky (Count di Luna) ルーナ伯爵:ディミトリー・ホロストフスキー
Stefan Koca'n (Ferrando) フェランド:ステファン・コツァーン
Eduardo Valdes (Ruiz)
Maria Zifchak (Inez)
Conductor: Marco Armiliato 指揮:マルコ・アルミリアート
Production: David McVicar デビット・マクヴィガー
Set design: Charles Edwards
Costume design: Brigitte Reiffenstuel
Lighting design: Jennifer Tipton
Choreography: Leah Hausman
Stage direction: Paula Williams
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コメント
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>武人じゃなくて詩人
そうそう、さいしょっから「吟遊詩人が…」って言ってるし、だいいち「トロヴァトーレ」なのに、そんなことすっかり忘れちゃうマッチョさ加減が常なんですよねえ。
マルちゃんは優しかったですね。
ザジックやホロ様はまたとびきり素晴らしかったです。
>ステファン・コツァーンのフェランド
かなり頻繁に大写しになってましたね。 こんなに目立つ役柄だったかしらと。
「日本の皆さーん、この人もイケメン枠ですから」ってアピールかと思いました。 なるほどディカプリオ…。
投稿: galahad | 2011/05/30 22:12
やっとレポを書き上げました~。
結局最後はホロストフスキー賛歌となりましたが
ヴァラリンさん、マルちゃんに惚れたのね
私も今回、英語に苦労してるマルちゃんに萌え~でした(笑)←そんなとこ?
>実は娑羅さんが、あまりのすごさに映画館で倒れているのではなかろうかと
「覚悟して見てね!」と何度も脅かされて(?)いたので、鼻血&失神は免れました
ただ、そういった興奮以上に、彼が本当に実力を出し切ってくれたこと、
そして私が初めて彼に惚れたルーナ伯爵(2002年ROHの映像)を超えてくれたこと、
このことがすごく嬉しかったですね。
水曜日にまた見に行ってきます♪
投稿: 娑羅 | 2011/05/31 01:12
galahadさん:
>だいいち「トロヴァトーレ」なのに、そんなことすっかり忘れちゃうマッチョさ加減が常なんですよねえ。
そうそう(笑) まあ、そういういい加減さが面白くもあるんですけどね
来日公演、ようやくキャストが確定したようですが、かなり変化がありましたね。まさか、マルセロ様がいらっしゃることになろうとは。
(心が揺れるじゃないですか~~(笑))
投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/05/31 18:23
娑羅さん:
ふふふ~~ お疲れさまでした(いや明日のライブビューイングもあるし、なんつっても実演が控えてますし、まだまだ序の口、始まったばっかりですなw)
>マルちゃん
いやー、来日公演でロドルフォ歌うことになったとかで、もうビックリ(!!)行きたい~~と心が揺れますw
(いかんいかん、浮気…^^;)
娑羅さんのレポも、後で読みに行きますね!!楽しみ
投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/05/31 18:27