111121 ドン・ジョヴァンニ@Metライブビューイング
昔は決して「好き!」とは言えなかったドン・ジョヴァンニ。でもなんだかんだで、実演も(*1)4,5回見てるし、映像もそこそこ見ているし、CDも乱読ならぬ、乱聴き?しているのですが、なかなかこれ!というものに行きあたりません。
特に実演では、いつも女性陣…アンナとエルヴィラ、双方に不満が残ることが多く、どうも印象が薄くなってしまいがち。
(*1):2005年冬のコーミッシェ・オパー・ベルリン、2006年冬のバレンシア、2007年のベルリン国立歌劇場来日公演×2、2008年の新国立劇場。うち2006年バレンシアでは、ヴィノグラードフがレポレッロを、2007年ベルリン来日では、マゼットをそれぞれ歌っています。
ところが!
今回のライブビューイングのエルヴィラは、バルバラ・フリットーリ。ジョヴァンニを包み込むような柔らかな声としっとりした包容力と母性愛がびしびし伝わってくる、懐の深い愛情たっぷりの役作りには、本当に引きこまれました。
でもシリアス一辺倒ではなく(インタビューでも話していたように)この役を楽しんで歌っているところがまた、素敵。
コミカルなところも、さりげない感じでホントに素晴らしかった。あんまりこういう言い方は好きじゃないんですけど、大人の女性の余裕を感じました。
そんな彼女が、ジョヴァンニとの絡みの場面で「いい加減にしろよ」と言われて
「どうせ分別なんて、ないんだし」(だったかな?あれ?!でも、確かこーいうニュアンスの字幕だった^^;)
と歌ったところで、うわぁぁぁぁぁ、ジーン…
若くて、ずーっと怒りを爆発させているだけのエルヴィラがこう歌えば「まあ、そうだよねw」と笑いを取ることになるんでしょうけど
趣味も良く、凛とした品格が匂い立つような、大人の女性がこう歌うからこそ、ぐっと心に響くわけで。
晩餐の場面で「私のことはもういいから改心して!」と懇願するところも、あ~~、私もこんな風に懐深く、男を愛してあげたい…こんな風になれたらなあ、なーんて、しみじみ惚れ惚れしてました。
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演奏全体も◎。F.ルイージの指揮は、もう少しゆったりと聴かせて欲しいな、というところも部分的にありましたけど、構築がしっかりしていて、躍動感たっぷり。私にとっては作品の中で、間延びしているように感じ、記憶が飛ぶこともナキニシモ…な部分もあるんですが、そーいうところもきっちり抑えてくれて、全く退屈することなく、聴き通せ(見通せ)たのは、初めてかもしれません。やっぱりルイージ様、好きです(#^.^#)
演出も、新演出でも立派な装置&きっちり作りこんである衣装+人物関係の位置づけがはっきりしていて、すんなり納得できて、わかりやすかったです。
タイトルロールのマリウシュ・クヴィーチェンだって、充分にカッコイイし、品格も充分、素敵なジョヴァンニでしたけど、レポレッロの方が頭一つ背が高いもんですから、見た目的には逆に見えてしまう時もあって。
私にはこういう、知的な役作りのレポレッロは非常に好感度大なんですけども、俳優の鹿賀丈史さんにちょっと似た感じのルカ・ピサローニは、うん、ちょっと、カッコよすぎちゃったかも(笑) 歌もうまいしねぇ。
「カタログの歌」って、心から満足した!ということは殆どなきに等しいんですけど、今回は花マルあげちゃいます
それから、マゼット!!なんと声が低いんでしょう(#^.^#)
つい?!うっとりしてしまって^^;;;;;
オッターヴィオのラモン・ヴァルガスも、歌はすごく素敵だったんですけど、ワタシ、困ったことに(笑)彼が笑いのツボにハマってしまい。。。
特に、仮面をつけて出てきたところでは、まるで
「黒子の頭巾をかぶって、仮面舞踏会のコスプレしているカールおじさん」
のように見えてしまって、
つい「ぶっ」と吹き出してしまって、あわてて口元をハンカチで覆い「げほげほ」と咳をしているフリをしたのですけど、
その後、どうしても彼を見ると、笑いがこみあげてしまうので、後の方では彼が出てくると目をそらして、
顔を見ないように、声だけ聴くようにしてました^^;(ごめんなさい)
「ヴァラリンさん、大丈夫ですかっ?!」と同行したお友達が、休憩時間に心配してくれたんですが
「いやー、実はね。。。」
と、説明するのが、恥ずかしかったです(笑)
彼女はアラフォーの私よりも一回り年下。ミュージカルの舞台は良く見ているけど、オペラは初めてで、一応今回のHD鑑賞に向けて、CDや対訳本や「オペラ解説本」で、自分なりに予習をしてきてくれました^^
まず、粗筋を読んで「おどろおどろしい話なのかな…?」と思いながらCDを聞くと、あれ?意外とかわいらしい音楽もあったりする、舞台で人が動いているのを見たら、どう感じるか?が、凄く楽しみです…と言ってたのです。
そんな彼女が
「人物関係がわかりやすかったし、すっごく面白かったです!作品が「喜劇」だということもわかりました。モーツァルトって、古い時代のものですけど、現代の感情にもちゃんと通じるし、普遍的なものだというのが納得できましたし、ミュージカルを見る上でも、すごく勉強になりました!!」
と、大興奮。ああよかった、オペラへのとっかかりが、いい形で出来て(笑)
私もオペラを観始めて10年余り。前衛演出に傾倒した時期もありますけど、最近そういったものにも食傷気味なこともあってか、
「やっぱり、初めて観る人、観始めて間もない人には、このぐらい豪華な演出で、オーソドックスな方がいいのかなぁ」
と、改めて感じました。最初の印象って、大事ですからねー。
それと、私がオペラを観始めた頃に買いそろえたメト上演のDVDよりも、近年のライブビューイングの映像の方が、演奏の質がぐっと向上しているような気がします。ライブビューイングで「外した!!!」という経験は今のところありませんし、毎回、とても楽しく鑑賞できてますし。
演奏の質の向上もさることながら、やっぱり、現代に生きる人間には、今、この瞬間に演奏される解釈、演奏スタイルの方が、馴染みやすい…
ソフトでの鑑賞は、音楽に馴染む為、劇場やコンサートホール以外の場所で音楽に触れる為にも、もちろん必要不可欠ですけど、
現代の「いま」の演奏に触れることによって、時代の流れのようなものを、耳で、目で、肌で感じながら
知らず知らずのうちに、徐々に自分の中に蓄積しているのかもしれません。
それにしても、今の時代、ドンジョ歌いの歌手さんたちは、もしかしたら、すっごく充実しているのかも…と思いました。ちょっと思いつくだけでも、年末のスカラ座でのダブルキャスト、ペーター・マッティ、イルデブランド・ダルカンジェロ、そして今回のマリウシュ・クヴィーチェン、もう少し間口を広げると、アーヴィン・シュロット、クリストフ・マルトマンなどなど。
今回レポレッロを歌ったピサローニも(クヴィーチェンがインタビューで話していたように)いずれ、素敵なドンを歌うでしょう。
・・・
・・・・・・・
・・・ほーんと、頑張って欲しいわ。
「僕の一番好きなオペラだよ」と、ドン・ジョヴァンニという作品を愛してやまない、私の愛するゴヒイキさんにも(笑)
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Don Giovanni @ Met Live-viewing(HDD)
Mariusz Kwiecien (Don Giovanni)
Luca Pisaroni (Leporello)
Marina Rebeka (Donna Anna)
Ramón Vargas (Don Ottavio)
Barbara Frittoli (Donna Elvira)
Mojca Erdmann (Zerlina)
Joshua Bloom (Masetto)
Štefan Kocán (The Commendatore)
Conductor: Fabio Luisi
Production: Michael Grandage
Set & Costume design: Christopher Oram
Lighting design: Paule Constable
Choreography: Ben Wright
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コメント
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コスプレしたカールおじさん! 人のいいのがまるわかりでしたね~。
フリットリは理想のエルヴィラ。 ふんわり上品な声にうっとりでした。
ピサローニは、前回の幕間インタビューの時に眼鏡かけてきっちりスーツでビジネスマンみたいだったんですよ、レポレッロにはイケメンすぎるだろ…と思っていたけど、可愛くておもしろかったです。
これもDVD欲しいなあと思いました。
投稿: galahad | 2011/11/23 21:54
galahadさん:
>カールおじさん
そーなんですよ。あんなにまるまるして(笑)温厚そうな御顔つきで「復讐を~」とか歌っても、善人なのがバレバレというか。
最後にアンナから「あと一年待って」と言われた時に、会場がどっと沸いてましたけど^^; さもありなん…という感じで、同行したお友達もクスクス笑ってましたヨ^^;
ピサローニ、評判いいですね!
前にクシェイ演出のDGでは、マゼット歌ってたのを観たことはあるんですけど、やったらめったらシリアス路線のDVっぽいマゼットで、ちっとも可愛くなかったので^^;敬遠してたんですが、器用な方なんでしょうね。
私もこの演奏ならば、DVD買い!です。本当に最近のライブビューイングは、外れが殆どなくって、嬉しい限りです。
投稿: ヴァランシエンヌ | 2011/11/24 23:06