121114 トスカ@新国立劇場
平日昼公演の割には大盛況。何度もやっているプロダクションでも、人気演目となればさすがに埋まりますね。
トスカ実演で観るのは二回目。前回はプレゲンツ音楽祭の湖上に設置された舞台で、野外ならではのスペクタクルな演出や仕掛けに圧倒されたのですが、劇場という空間の中で、オーソドックスな演出で観るのは初めて。
実は途中で飽きてしまうんじゃないかと危惧してたんですが、
今日は最近オペラデビウした若いビギナーさんと一緒で、もー彼女の浸っている様子がビシバシ伝わって来て、私も気が抜けない状態(笑)
長く観劇を続けていると、こういう緊張感、時には必要です。
一幕でトスカが、青いドレスで登場した時に思わず「ほ〜〜〜」と心の中でため息。幕ごとに衣装が変わり、2幕ではお約束の赤いドレス、3幕では活動的なオンナを連想させる、黒系のシンプルないでたちでしたが、個人的には青が大ヒット。
西洋人でもなかなか青いドレスが似合う方って、いないと思うんですけど、ノルマ・ファンティーニは体型的にもベスト。身のこなしからみめかたち、お顔の作りの細部まで、まさにトスカにピッタリでした。
ファンティーニは何度も新国で歌って下さっていますが、私はここで聴いたのは初めて。8年前のベルリンでのドン・カルロのエリザベッタ以来の再会でしたが、純イタリア風の実力派ソプラノで安定感はあるし、過度にベタベタし過ぎず、でも女性らしさ満点、声的にも表現も、申し分なかったと思います。
「歌に生き、恋に生き」って、キリスト教徒ではない自分にとって、信心深いトスカの信仰心というのが何となく遠いものに感じるせいか、そんなに好きなアリアじゃないんですけど、今日のファンティーニの歌唱は心に迫って、目頭が熱くなりました。
トスカって、オペラ聴き始めの頃には映像やCDをいろいろとっかえひっかえ見聞きしたけど、意外に飽きのきやすい作品かな?という気がしていたんですが
(というか、どっちかと言うと、いわゆるプリマドンナオペラよりも、大勢出てきて、てんやわんやする作品の方が好きなせいもあるのかも)
こうやって、いいソプラノさんで見聞きすれば、そこはやはり「オペラの中のオペラ」と言われる所以の優れた作品だと思いました。
カヴァラドッシのサイモン・オニールは、ワーグナー歌いで近年大劇場を席巻してるんですよね。声的にはすごく明るくて、ちょっと悲劇性が乏しく感じるかも、とも思いました。
でも声量もあるし、ヴィットーリア!を始め、思聞かせどころでは思いっきり張り上げてくれて、声の威力に酔うというか、イタリアオペラならではのカタルシスは、充分感じることができました。
スカルピアのセンヒョン・コーは、身体的には西洋人のお二人にちょいと見劣りしてしまいますが、声は素敵。
ただ、スカルピアって悪代官だけ、ではないと思うので(彼は地位も名誉もあるし、表面的には女性に対するマナーもわきまえている人)
トスカと対峙した時に、ずーっと仏頂面ではなく、ちょっとした余裕の微笑みとでもいうか「フッフッフ…」的なニヤリとさせるような表情付けも欲しかったかな。
カーテンコールではサービス精神に溢れ、とても弾けていらしたので、そういうことができない方ではないと思ったのですが。
ちょっとした不満がないわけじゃないけど、全体的にはハイレベルの演奏だったと思いますし、ここ数年、新国立劇場の上演も一定水準はキープできるようになっているもんだな、と思います。
ご一緒したビギナーさんは勿論大感激。終始ため息つきっぱなし、終わった後も「暫く散歩して、頭冷やして帰ります(*^_^*)」と大満足の観劇になり、連れて行った私もホッとしました。
2012年11月14日 トスカ@新国立劇場 2階1列目左側にて観劇
【指揮】沼尻竜典
【演出】アントネッロ・マダウ=ディアツ
【美術】川口直次
【衣裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァロッティ
【照明】奥畑康夫
【トスカ】ノルマ・ファンティーニ
【カヴァラドッシ】サイモン・オニール
【スカルピア】センヒョン・コー
【アンジェロッティ】谷 友博
【スポレッタ】松浦 健
【シャルローネ】峰 茂樹
【堂守】志村文彦
【看守】塩入功司
【羊飼い】前川依子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
« Tweetまとめ from 2012-11-04 to 2012-11-10 | トップページ | Tweetまとめ from 2012-11-11 to 2012-11-17 »
「オペラ」カテゴリの記事
- 141206 ドン・カルロ@新国立劇場(2014.12.17)
- 140528 ドン・カルロ@ベルリン・シラー劇場(2014.07.02)
- 140527 ドン・ジョヴァンニ@ベルリンドイツオペラ(2014.06.19)
- チャイコフスキー『エフゲニー・オネーギン』 作品概要(2013.06.06)
- 130113 ニュルンベルクのマイスタージンガー@ライプツィヒ・オペラ:★★★★★(2013.02.24)
「新国立劇場」カテゴリの記事
- 141206 ドン・カルロ@新国立劇場(2014.12.17)
- 140122 カルメン@新国立劇場(2014.01.24)
- 新国立劇場情報センターに行ってきました(10月31日)(2013.10.31)
- 131029 フィガロの結婚@新国立劇場(2013.10.30)
- 131009 リゴレット@新国立劇場(2013.10.10)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント