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131029 フィガロの結婚@新国立劇場

最終日に行ってきました。「お前はどうせ《前回(2010年)のタイトルロールは〜〜》」しか言わないだろ!」と言われそう^^;

こんな時は沈黙の女神に徹するのがいいのかな、とも思ったのですが、ちゃんと楽しんで参りましたよん

公演写真は→→→

リゴレットにしろ、先日テレビ放送した「コジ」にしろ、今回のフィガロにしろ、100%満足ではないんですが、東京で恒常的にこのレベルの演奏が聴けるようになったことは本当に凄いと思います。来日公演と新国との値段の差ほど、上演の質に差はないでしょう。
昨日も学校団体の学生さんたちが入っていらっしゃいましたが、芸術鑑賞プログラム等でこのぐらいのものが聴ける東京の学生さんは恵まれていると思います。

フィガロは《フィガロ》というだけでも、そこそこ集客もあるでしょうし
(今回7、8割ぐらいの入りでしょうか・・・2階席の最後列はかなり空いてました。年齢層も高めですし、平日の昼間なので仕方ないのかな。ちょっと勿体ないですね…)
前回でおしまい、との噂もあった、すっきりしたミニマル舞台を改めて見てみると…この演出は色んな意味で、やめられないだろうなあ…と思いました。

前回バルバリーナを歌っていたスザンナの久嶋さんは大健闘。再演時に前回の上演のことをわかっている歌手が出ることで、上演の要としてドラマを動かす求心力になるのではないかと。
(前回その役割を果たしていたのが、ロレンツォ・レガッツォ(2007年フィガロ→2010年伯爵)だったんだと改めて思いました)

久嶋さんのスザンナ、多分、色んなビデオやCDを見たり聴いたりして勉強されたんだろうな…という努力がひしひし伝わってきましたが、多分一番支えになった原動力は、前回出演なさった時の経験でしょうね。
アリア「早く来て、喜びの時…」は、少し元気が良すぎたかもしれませんが、表情も豊かで気の効く、チャーミングなスザンナでした

伯爵夫妻、特にコンテッサは評判が良いようですが
コンテッサはまだ「枯れてない」女性ですが、熟れた果実が落っこちる寸前ぐらいの雰囲気が欲しい。まだ固いつぼみのまま嫁いじゃった…そしてやんちゃ夫の浮気に悩まされる…では、可憐を通り越して痛々しい。声もスザンナやパミーナ、ゾフィー向きの声じゃないのかな。

ちょっと粗野でやんちゃ伯爵も悪くないけど、前回のレガッツォのような「エレガントな大人の男の嫌らしさ」が欲しいところ。お二人とも良い声ですし、バスと違い、ソプラノやバリトンには年相応、声に相応しい若い役があるのですから、もう少し違う役で聴いてみたいです。

ケルビーノは身長がそんなに高くなく(日本人キャストに混じっても、あまり変わらないぐらい)いかにも女の子という可愛いお顔で、ケルビーノに不可欠な、不可思議な少年っぽさに欠けるような気が。この役はもっと中性的でユニセックスな雰囲気の歌手の方が合っていると思います。

で、フィガロ・・・
これが困ったことに、2階の一番後ろという遠目の席で見ていると、髪型、スタイル、特に横からのシルエットは前回のフィガロとそっくりで(足は今回のフィガロの方が圧倒的に長いし、胴回りがすっきりしている)
動き方もビデオで研究した?と思うぐらい、似てるんです。まあ同じ衣装を着て同じ演出で動いているのですから、当たり前と言えば当たり前なんでしょうけど、双眼鏡で覗いて、声聴くと「あ、やっぱり別人よね」と振り戻される…というか。
ふとした瞬間にフラッシュバックが蘇って、動揺…^^;

マルコ・ヴィンコはイタリアの往年のバス歌手、イヴォ・ヴィンコ氏の甥っ子で、一度聴いてみたいと思い楽しみにしていました。
特に2幕のスザンナ&コンテッサに自分のプランを語るレチタチーヴォの部分は、快活な煌めきがあって、一番良かったと思います。

ですが、本調子ではなかったのでしょうか?声が思ったほど響かず「ここで聞こえてきて欲しい」と思う低音部が特に響いてこなくてちょっと残念。アリアも単調だったかな…
特に大好きな「全て準備が整った」の歌い出し、そんな何気なく歌いだしちゃうの〜?!と、ここで初めて「この人は前回のフィガロと全く別人なんだわ」と強く強く、感じました。
その後の、二人の化かし合いで、フィガロがスザンナだと気がつくところ…スザンナが被っていたカツラが外れた時に「わかった、スザンナだ!」っていう感じになっちゃったのは…やっぱりここは声でピンときてくれないと。

あれ?あそこ、2010年にはどうやってたかな・・・?

それでも実直そうで人の良さそうなフィガロには、なんとなく好感が持てて「アカン!!!」とばっさり切り捨てられない何かがありました。何が適役なんだろう…?やはりロッシーニの、もっと軽い感じの役なのかな?スパラフチーレはちょっと苦しいかもね、とか思いました。

前回のフィガロ=溺愛しているアレクサンドル・ヴィノグラードフも満点の出来ではなかったと今でも思ってますけど、
こうして同じ演出で別の歌手さんで聴くと、前回のキャストも含めて、決して悪くはなかったんだな、と思いました。

それがファンのひいき目と受け止められたらそれはもう、そう釈明するより他ないのですが、
今、新国の情報センターで前回のフィガロの映像をしっかり見てみると、あの時見えなかった、気がつかなかった何かが見えて、聞こえてくるかもしれません。

ボタンを一つ掛け違うととんでもなく退屈になってしまう《コジ》と比べると、《フィガロ》はキャストに多少の凹凸があっても、揃うべきところが揃えばそれなりに楽しめてしまうのは、作品の大いなる魅力でしょうね。久しく離れていた+リゴレット(スパラフチーレw)にまみれている(笑)最近の耳には、新鮮な響きに聞こえました。

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2013年10月29日
フィガロの結婚@新国立劇場(★★★)

演出:アンドレアス・ホモキ
指揮:ウルフ・シルマー

アルマヴィーヴァ伯爵:レヴェンテ・モルナール
伯爵夫人:マンディ・フレドリヒ
フィガロ:マルコ・ヴィンコ
スザンナ:九嶋香奈枝
ケルビーノ:レナ・ベルキナ
マルチェッリーナ:竹本節子
バルトロ:松位 浩
バジリオ:大野光彦
ドン・クルツィオ:糸賀修平
アントーニオ:志村文彦
バルバリーナ:吉原圭子

合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
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★参考までに、2010年の情報★
2010年フィガロの結婚@新国立劇場 全公演レポリンクその他
(内容は同じですが)初代ファンサイトにまとめたもの

(新国の紹介クリップはこちら↓のキャストです)

【指 揮】ミヒャエル・ギュットラー
【演 出】アンドレアス・ホモキ

【アルマヴィーヴァ伯爵】 ロレンツォ・レガッツォ
【伯爵夫人】ミルト・パパタナシュ

【フィガロ】アレクサンダー・ヴィノグラードフ♥ 
【スザンナ】エレナ・ゴルシュノヴァ
【ケルビーノ】ミヒャエラ・ゼーリンガー
【マルチェッリーナ】森山京子
【バルトロ】佐藤泰弘
【バジリオ】大野光彦
【ドン・クルツィオ】加茂下 稔
【アントーニオ】志村文彦
【バルバリーナ】九嶋香奈枝

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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♪ついでのついで♪
2010年のフィガロ役、アレクサンドル・ヴィノグラードフの「全て準備は整った」
(音源は2006年2月のロンドンでのコンサート)

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